
この記事でわかること
建設分野の特定技能在留者は2025年6月末で44,160人。人手不足対策の現実的な選択肢として、受入数は伸びています。ただし建設には他分野にない特別ルールがあり、コストと手間も発生します。受入数・制度・費用を、経営判断の材料として整理します。
主要データ
- 建設分野の特定技能在留者は2025年6月末で44,160人。特定技能全体(336,196人)の13.1%で、分野別では4番目。全体は前年同期比+33.5%と急増している(出典:出入国在留管理庁)
- 建設は入管への申請前に、国土交通省の「建設特定技能受入計画」の認定が必要。さらにJAC(建設技能人材機構)または会員団体への加入が必須(出典:国土交通省、JAC)
- JACの受入負担金は特定技能1号で1人あたり月12,500円(2024年7月改定・一律)。このほか加入形態(会員団体経由か賛助会員か)に応じて会費がかかる場合がある(出典:JAC)
- 1号特定技能外国人などの受入人数は、受入企業の常勤職員数に応じた上限の範囲に制限される(上限のカウント対象の詳細は国交省の要件で要確認)。賃金は同種の日本人と同等以上が要件(出典:出入国在留管理庁、国土交通省)
建設業の担い手不足は構造的です。高齢化が進み、若手の入職が細る。その穴を埋める手段のひとつが、特定技能の外国人材です。建設分野の在留者は4万人を超え、増え続けています。
ただし「人が採れる」だけの話ではありません。建設の特定技能には、他分野にない手続きとコストがあります。経営判断としては、採用効果と負担を両にらみで見る必要があります。順に整理します。
本記事は特定技能制度の一般的な解説です。在留資格の要件・手続きや個別の受入判断は、制度改正により変わる場合があります。実際の申請・手続きは行政書士など専門家にご確認ください。
建設の特定技能在留者は44,160人に増えた
出入国在留管理庁によると、特定技能の在留外国人は2025年6月末で全体33万6,196人に達しました。前年同期(25万1,747人)から約8万4,000人、+33.5%の増加です。制度はこの数年で大きく伸びました(出典:出入国在留管理庁)。
このうち建設分野は44,160人で、全体の13.1%を占めます。分野別では、飲食料品製造業、介護、工業製品製造業に次ぐ4番目の規模です(出典:出入国在留管理庁)。建設の人手不足の深刻さを踏まえれば、特定技能はすでに現場の戦力として一定の位置を占めていると言えます。
建設だけの特別ルール——国交省の受入計画とJAC加入
建設の特定技能は、他分野と手続きが違います。外国人材を受け入れるには、出入国在留管理庁への在留資格申請の前に、国土交通省の「建設特定技能受入計画」の認定を受ける必要があります(出典:国土交通省)。建設業の処遇改善や適正な雇用を担保するための仕組みです。
さらに、受入企業はJAC(建設技能人材機構)またはその会員団体への加入が必須です(出典:JAC)。JACは教育訓練、技能評価試験、就職支援、現場巡回、母国語相談などを担う受入れの実施機関という位置づけです。受入計画の申請は外国人就労管理システム(FWMS)を通じてオンラインで行い、標準的な審査期間はおよそ2か月とされます(出典:国土交通省)。
受入計画の認定では、これら以外にも複数の要件が求められます。建設業許可の取得、受入企業と1号特定技能外国人のCCUS(建設キャリアアップシステム)への登録、技能の習熟に応じた昇給、受入れ後講習の受講などです。ここで挙げたのは主な入口であり、全要件は国土交通省の公表内容や専門家でご確認ください。
つまり、建設で特定技能を使うには「国交省の計画認定」と「JAC加入」を軸に、複数の要件を満たす必要があります。他分野より手間がかかる点は、受入を検討する前提として押さえておくべきです。
費用の実態——負担金と賃金
コスト面で具体的なのが、JACの受入負担金です。特定技能1号で1人あたり月12,500円(2024年7月改定・一律)。このほか、JACへの加入形態(会員団体を経由するか、賛助会員として直接加入するか)に応じて会費がかかる場合があります(出典:JAC)。負担金は、JACが受入れ実施機関として提供する教育訓練や試験、巡回・相談などの原資にあてられます。
賃金も見落とせません。特定技能の外国人材には、同じ仕事に従事する日本人と同等以上の賃金を払うことが要件です(出典:出入国在留管理庁)。技能実習からの移行者で経験年数がある人材なら、それに見合った処遇が求められ、技能実習時より人件費は上がるのが通常です。「安い労働力」という発想で考えると、見込みを外します。
受入人数にも上限があります。建設では、1号特定技能外国人などの受入人数に、受入企業の常勤職員数に応じた上限が設けられています。自社の規模に応じた枠がある、という制約です(上限のカウント対象の詳細は国土交通省の要件をご確認ください。出典:国土交通省)。
技能実習からの移行と、2027年の制度変更
特定技能の人材の多くは、技能実習からの移行組です。全分野の数字ですが、2024年時点で特定技能(1号)のうち技能実習からの移行者が約6割を占めるとされます(出典:出入国在留管理庁)。建設でも、技能実習で経験を積んだ人材が特定技能へ移る流れが中心です。
制度は転換期にあります。技能実習制度は廃止され、2027年4月に「育成就労制度」が始まる予定です。受入れの枠組みや移行の道筋が変わるため、中期の採用計画を立てる際は、最新の制度動向を前提に置く必要があります。具体的な要件は所管省庁の公表内容を確認してください。
人手不足対策としてどう考えるか
経営判断としては、特定技能を「採用手段のひとつ」として、効果とコストを並べて見ることです。受入数が伸びているのは、それだけ需要がある証拠です。ただし在留者数だけでは定着率や採算までは分からないため、効果は自社で見極める必要があります。一方で、国交省の受入計画認定、JAC加入と月12,500円の負担金、日本人同等以上の賃金、常勤職員数の枠といった負担と制約がついてきます。
失敗の型としては、人手不足の焦りから受入のコストと手間を過小に見積もるパターンが考えられます。負担金や賃金、(委託する場合の)登録支援機関費用、住環境の整備までを含めた総コストで採算を見ないと、想定より負担が重く感じられます。逆に、定着して技能を積んだ人材は、特定技能2号への移行も視野に長く戦力になり得ます。短期の頭数合わせではなく、育成と定着の前提で設計するのが現実的です。
自社の規模・職種・育成体制に照らして、特定技能が向くのか、外注比率の調整や省人化と組み合わせるのか。建設業の担い手不足の全体像はデータで見る建設業の人材で確認できます。人手不足は単一の手段では解けないため、複数の打ち手の一つとして位置づけるのが妥当です。
よくある質問
Q1:建設で特定技能を受け入れるには何が必要ですか。
A1:主な入口は、国土交通省の「建設特定技能受入計画」の認定(在留資格申請の前)と、JAC(建設技能人材機構)または会員団体への加入です。このほか建設業許可、受入企業・1号特定技能外国人のCCUS登録、技能に応じた昇給、受入れ後講習なども要件です。全要件と手続きは所管省庁や専門家にご確認ください(出典:国土交通省、JAC)。
Q2:受入のコストはどのくらいですか。
A2:JACの受入負担金が特定技能1号で1人あたり月12,500円(2024年7月改定)かかり、これに年会費が加わります。さらに賃金は同種の日本人と同等以上が要件です。1号特定技能外国人への支援を登録支援機関に委託する場合は、その委託費もかかります(要件を満たせば自社で支援を実施することも可能)(出典:JAC、出入国在留管理庁)。
Q3:受け入れる人数に制限はありますか。
A3:建設では、1号特定技能外国人などの受入人数が、受入企業の常勤職員数に応じた上限の範囲に制限されます。自社の規模に応じた枠がある、という考え方です。上限のカウント対象の詳細は国土交通省の要件をご確認ください(出典:国土交通省)。
出典・参考
- 特定技能在留外国人数(分野別):出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」(https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html)
- 建設特定技能の制度・受入計画:国土交通省 建設特定技能受入事業(https://www.mlit.go.jp/)
- JACの役割・受入負担金:建設技能人材機構(JAC)(https://jac-skill.or.jp/)
- 受入れ見込数の見直し・制度改善:出入国在留管理庁(https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/03_00027.html)
まとめ:効果とコストを両にらみで設計する
建設の特定技能在留者は2025年6月末で44,160人と、人手不足対策の現実的な選択肢に育ちました。ただし建設には、国交省の受入計画認定とJAC加入という他分野にない入口があり、月12,500円の受入負担金や日本人同等以上の賃金、常勤職員数の枠といった負担と制約がついてきます。
多くは技能実習からの移行で、2027年4月には育成就労制度への転換も控えます。経営判断としては、頭数合わせではなく、総コストと育成・定着を前提に設計すること。自社の規模と職種に照らし、省人化や外注調整と組み合わせた複数の打ち手の一つとして位置づけるのが現実的です。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。制度・要件は改正される場合があります。具体的な手続き・判断は所管省庁の公表内容や専門家にご確認ください。


