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入札不調率は過去最高水準!データで見る公共工事の現実

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入札不調率は過去最高水準!データで見る公共工事の現実

入札不調率は過去最高水準!データで見る公共工事の現実

「応札者ゼロ」の工事案件が急増しています。国土交通省の「建設工事受注動態統計」によると、公共工事の入札不調率は2023年度に大幅上昇しました。過去10年で最高水準に達した状況です。

需要は堅調なのに供給が追いつかない。大和総研の分析では「建設需要の下支え要因は継続するが、人手不足による供給制約が顕在化」と指摘します。現場では何が起きているのでしょうか。

⚠️ 本記事の施工情報は一般的な解説です。実際の施工は現場条件に応じた安全管理のもと行ってください。

入札不調の現状:データで見る深刻度

全国の入札不調率推移

入札不調とは、入札参加者がいない「入札不成立」と、応札はあったものの予定価格を上回る「落札者決定に至らない」ケースを指します。

国土交通省直轄工事の入札不調率は2023年度で過去最高水準に達しました。近年は継続的に上昇傾向にあります。特に土木工事では2桁台に突入した状況です。

地方整備局別では、関東地整がトップ水準となります。東北地整、中部地整も高い数値を記録しました。一方、九州地整は比較的低い水準にあります。首都圏の人手不足が数字に表れた形です。

工種別の入札不調率格差

工種別では維持修繕工事の不調率が最も高い水準にあります。次いで河川工事、道路工事と続きます(出典: 国土交通省「建設工事受注動態統計」2024年)。

維持修繕工事は小規模案件が多く、大手の参入意欲が低い状況です。地域の中小企業頼みですが、その中小企業も人手不足で対応できない案件が増えています。

「小規模工事で不調率が顕著に高い傾向にある」(出典: 建設経済研究所「地域建設業の現状と課題」2024年)との分析もあります。

詳しい推移はデータで見る建設業の人材で確認できます。

設計労務単価上昇と予定価格乖離の実態

12年連続の労務単価上昇

国土交通省の設計労務単価は2024年3月改定で12年連続の上昇となりました。普通作業員の全国平均単価は大幅に上昇しています。2012年からの上昇率は50%を超える水準に達した状況です。

型枠工では設計労務単価が大台を突破し、その後も継続的に上昇中です。現場では「実勢価格はさらに高い。設計単価を大きく上回る金額でないと確保できない」との声も聞かれます。

予定価格と実勢価格の乖離

問題は設計労務単価の上昇ペースが実勢価格に追いついていない点です。McKinseyの調査では、建設業の生産性向上は年0.4%にとどまり、他産業の1.8%を大幅に下回ります。生産性が上がらない分、人件費上昇がそのまま工事費に転嫁されます。

建設経済研究所の分析によると、「予定価格と実勢価格に大幅な乖離が生じており、地方部では特に乖離幅が大きい」(出典: 建設経済研究所「積算価格と実勢価格の乖離分析」2024年)状況です。

特に専門工種で乖離が顕著です。とび工の実勢日当は首都圏で設計労務単価を大幅に上回る水準となっています。

最新のコスト動向はデータで見る建設コストで詳細を確認できます。

地域格差の実態:首都圏と地方の二極化

首都圏の深刻な状況

関東地整管内の入札不調率は全国最高水準にあり、その中でも東京都内の案件が特に高い数値を示します。神奈川県、埼玉県も高水準で続いています。

背景にあるのは民間需要との競合です。都内では再開発案件が目白押し。「公共より民間の方が単価がいい。しかも支払いサイトが短い」と都内土木業者からの声もあります。

建設業の有効求人倍率も極めて高い水準にあります。職人の奪い合いが激しく、公共工事の予定価格では人が集まらない状況です。

地方部の構造的課題

一方、地方では別の課題があります。九州地整の不調率は全国最低レベルですが、これは「応札する業者がそもそも少ない」状況の裏返しでもあります。

技術職員が極めて少ない市区町村が多数を占めます。相当数の団体が「技術職員ゼロ」の状況です(出典: 国土交通省「地方公共団体における建設業担当職員の配置状況」2025年)。発注者側の技術力不足も入札制度の運用に影響しています。

人手不足と倒産増加の悪循環

建設業倒産の急増

2023年の建設業倒産件数は1,506件。前年比で大幅に増加し、4年ぶりに1,500件を超えました(出典: 東京商工リサーチ「2023年建設業倒産動向」)。

倒産原因の多くが「人手不足倒産」となっています。「仕事はあるが人がいない」状況です。皮肉にも、入札不調で公共工事が取れなくなった中小企業が、無理な民間工事を受注して資金繰りに窮するケースも増えています。

供給力の構造的減少

建設業許可業者数は継続的に減少傾向にあります。ピーク時から大幅に減少した状況です。特に一般土木工事業は20年前から大幅に減りました。

許可業者数の推移はデータで見る建設業許可業者数で確認できます。

「廃業する業者は増えるが、新規参入は限定的。技能者の高齢化で1社あたりの供給力も低下している」(建設業振興基金の調査)との分析があります。

発注者の対応策と効果

総合評価方式の見直し

国土交通省は入札不調対策として総合評価方式の見直しに着手しています。技術提案の簡素化で応札者の負担軽減を図ります。

2024年度から導入された「フレックス工期」では、工事着手時期を6か月の幅で調整可能にしました。施工時期の平準化で不調率改善を狙います。

予定価格の適正化

設計労務単価の年2回改定も検討されています。現在は年1回ですが、急激な人件費上昇に対応するため改定頻度を上げる方針です。

一部の地方整備局では「実勢価格調査」を強化。地域の協会等から聞き取りを行い、予定価格の精度向上に取り組んでいます。

i-Construction推進と生産性向上の課題

ICT活用の現状

国土交通省は「i-Construction 2.0」で2040年度までに省人化3割・生産性1.5倍を目標に掲げます。ICT活用工事の実施率は約88%まで向上し、作業時間縮減効果は約21%を達成しています(出典: 国土交通省「i-Construction推進状況」2024年)。

中小企業への普及課題

問題は中小企業でのICT導入が進まない点です。「ドローン測量の機材費用だけで数百万円レベル。年間少数の工事では採算が合わない」との地方土木業者からの声もあります。

入札不調率の高い維持修繕工事や小規模工事でこそ省人化技術が必要ですが、コスト負担が重く普及が進まない状況です。

今後の見通しと対策

2030年に向けた構造変化

2030年時点で道路橋の過半数が建設後50年以上を経過します(出典: 帝国データバンク/国土交通省データ, 2025年)。維持修繕需要は確実に増加する一方、供給力不足は深刻化します。

インフラの状況はデータで見るインフラ老朽化で詳細データを確認できます。

実効性のある対策

入札不調を根本的に解決するには、以下の対策が急務です:

短期的対策(1-2年)

  • 設計労務単価の年2回改定実施
  • 地域別・工種別の実勢価格調査強化
  • フレックス工期の拡大適用

中期的対策(3-5年)

  • 中小企業向けICT導入補助の拡充
  • 複数年契約による工事平準化
  • 広域での工事発注による効率化

長期的対策(5-10年)

  • 建設業界のDX推進による生産性向上
  • 外国人材受入制度の拡充
  • プレハブ・工場製作化の推進

現場での対応策

建設会社としては、以下の対応が有効です:

  1. 入札戦略の見直し:不調率の高い工種・地域での参入判断を慎重に行う
  2. 協力会社との関係強化:専門工種の確保を最優先にする
  3. ICT投資の段階的導入:まず測量から始めて効果を検証する
  4. 工事平準化への対応:複数年契約案件への積極参入

現場状況により異なります。安全管理は必ず関係法令に従ってください。

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まとめ:入札不調時代の現実的対応

入札不調は一時的な現象ではありません。構造的な問題です。設計労務単価は12年連続上昇したが実勢価格との乖離は拡大し、地域格差も深刻化しています。

必要なのは、この状況を前提とした経営戦略への転換です。「取れる工事」から「利益の出る工事」への選別強化。人材確保を最優先にした協力会社との関係構築。ICT投資による省人化の段階的推進。

2024年度の設計労務単価改定率は平均的な上昇を示しました。しかし実勢価格の上昇率はそれを大幅に上回ると見込まれます。この乖離が続く限り、入札不調は構造的に発生し続けます。現場の実態を踏まえた予定価格の適正化が急務ですが、それまでは「選択と集中」による経営判断が生き残りの鍵となります。

インフラ老朽化問題全体の分析についてはインフラ老朽化が建設業にもたらす「静かな特需」と3つの経営リスクも併せてご覧ください。

現場状況により異なります。安全管理は必ず関係法令に従ってください。
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