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空き家は2023年に900万戸・空き家率13.8%で過去最多、建設業の3つの事業論点

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空き家は2023年に900万戸・空き家率13.8%で過去最多、建設業の3つの事業論点

この記事でわかること

総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点)によると、全国の空き家は900万戸、空き家率は13.8%で過去最多。2018年の849万戸(13.6%)から51万戸の純増です。種類別では賃貸用443万戸が最多ですが、賃貸・売却・二次的住宅のいずれにも該当しない「その他の住宅」が385万戸と全空き家の43%を占め、実質的な放置空き家として問題視されています。2023年12月施行の改正空家法で「管理不全空家」区分が新設され、固定資産税の住宅用地特例(小規模住宅用地200㎡以下は1/6、一般住宅用地は1/3に課税標準を軽減)の解除が制度化されたことで、所有者の対応圧力が強まっています。建設業経営者が検討する3つの事業論点(リフォーム・解体・地域選択)を整理します。

主要データ

  • 全国の空き家:900万戸、空き家率13.8%(2023年10月1日時点、総務省「住宅・土地統計調査」基本集計、2024年9月25日公表)
  • 5年間の増減:2018年849万戸(13.6%)→ 2023年900万戸(13.8%)で51万戸の純増・過去最多更新
  • 種類別(2023年):賃貸用443万戸、売却用32.6万戸、二次的住宅38.4万戸、その他の住宅385万戸(合計は表示単位の丸めにより一致しない場合があります。「その他」が全空き家の43%、同調査)
  • 空き家率の歴史的推移:1963年2.5%(52万戸)→ 1998年11.5%で10%突破 → 2023年13.8%で過去最多(同調査長期系列)
  • 2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法で「管理不全空家」区分新設、市区町村の勧告対象になれば翌年度から住宅用地特例(固定資産税課税標準1/6)の対象外

注記:本記事の数値は総務省の確報値に基づきますが、都道府県別・市区町村別の詳細は随時の統計表更新で微修正があり得ます。最新値は e-Stat でご確認ください。

空き家は2023年に900万戸・空き家率13.8%で過去最多、建設業の3つの事業論点

総務省「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」の基本集計(2024年9月25日公表)で、全国の空き家は900万戸、空き家率13.8%に達しました。2018年調査(849万戸・13.6%)から5年間で51万戸の純増、過去最多の水準です。1963年調査では空き家52万戸・空き家率2.5%でしたから、60年で空き家数は17倍、率は5.5倍に膨らんだ計算になります。

特に注目すべきは、種類別の構成です。賃貸用443万戸が最多ですが、賃貸にも売却にも出されておらず別荘でもない「その他の住宅」が385万戸で、全空き家の43%を占めます。このカテゴリには放置・低利用状態の住宅が多く含まれると考えられ、管理・活用の論点になっています。2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法では「管理不全空家」区分が新設され、所有者の対応圧力が強まる制度枠組みが整いました。

本記事では、総務省統計の一次データと国交省の空家法運用資料をベースに、建設業経営者が検討する3つの事業論点(リフォーム・解体・地域選択)を整理します。関連データは住宅市場ダッシュボードで月次・年次の更新を追っています。

データで見る

空き家数・空き家率の推移

空き家率の推移:1963年2.5%から2023年13.8%へ

総務省「住宅・土地統計調査」の長期系列で、空き家数と空き家率の推移を整理します(総務省 公表値、同調査 5 年周期)。

空き家数(万戸)

空き家率

補足

1963年

52

2.5%

高度成長期初期

1978年

268

7.6%

住宅大量供給期

1998年

576

11.5%

10% を突破

2008年

757

13.1%

リーマン前後

2018年

849

13.6%

5年前調査

2023年

900

13.8%

過去最多更新

空き家率13.8%は、単純計算で7〜8戸に1戸が空き家という水準です。ただし「率」の上昇が0.2ポイントに見える一方で、分母の総住宅数が6,241万戸(2018年)から6,502万戸(2023年)へ261万戸増えているため、率の上昇は緩やかに見えます。実態は51万戸の純増(年平均10万戸ペース)で、過去最多の更新が続いています。

空き家の種類別内訳:賃貸用443万・その他385万が中心

総務省「住宅・土地統計調査」2023年の空き家種類別(4区分)は以下の通りです。

種類

戸数(万戸)

全空き家に占める比率

賃貸用の空き家

443

49%

売却用の空き家

32.6

4%

二次的住宅(別荘等)

38.4

4%

その他の住宅

385

43%

合計

899

100%

賃貸用443万戸:「健全な流動在庫」とは限らない

最多の賃貸用443万戸は、入居者募集中の空室を含みます。ただし地方では老朽化した賃貸住宅の長期空室が多く、「募集中だが応募がない」状態の物件も相当数含まれます。賃貸用=健全な流動在庫と見なすのは実態と合いません。

その他の住宅385万戸:放置・低利用の中心

問題の中心は「その他の住宅」385万戸です。賃貸にも売却にも出されておらず、別荘でもない住宅の区分で、放置・低利用状態の住宅が多く含まれると考えられます。典型的には以下のような状態の住宅が想定されます。

  • 相続後に管理されていない住宅
  • 老朽化が進んで活用が難しい住宅
  • 所有者が高齢・施設入所などで管理できない住宅

このカテゴリは2018年の349万戸から36万戸の純増で、空き家全体の増加分の相当部分を占めます。放置・低利用空き家の増加が、空き家問題の本質的な論点の一つです。

2023年12月施行の改正空家法:管理不全空家と税制措置

2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法では、従来の「特定空家」に加えて「管理不全空家」という新区分が設けられました。放置すれば特定空家になるおそれがある状態の空き家が対象で、市区町村の調査・指導・勧告の対象になります(国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」関連資料)。

制度上の重要なポイントは、市区町村の勧告を受けた管理不全空家は、翌年度から住宅用地特例の対象外となる点です。住宅用地特例は、住宅が建つ土地の固定資産税課税標準を軽減する制度で、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は1/6、一般住宅用地(200㎡超の部分)は1/3に軽減されます。勧告後はこの特例が外れるため、小規模住宅用地部分では固定資産税課税標準が最大で約6倍まで増える計算です(実際の税額は評価額・負担調整措置・自治体の税率により異なります)。

この税制上のインセンティブは、放置空き家の所有者に解体・売却・活用のいずれかの対応を促す狙いで設計されており、2024〜2026 年にかけて市区町村の勧告件数と解体需要の動向が注目されています。詳細な運用は各自治体の空家条例・要綱で定められており、個別案件の対応は専門家への確認が必要です。

建設業経営者が検討する3つの事業論点

空き家の構造変化と改正空家法の施行は、建設業の事業ポートフォリオに影響します。経営者が検討する3つの論点を整理します(各論点の適否は事業規模・営業エリア・技術構成で異なります)。

1. リフォーム・リノベーション事業の位置づけ

空き家のうち活用可能な物件は、リフォーム・リノベーション需要の潜在源です。国交省「建築物リフォーム・リニューアル調査」の直近公表値で、リフォーム・リニューアル市場は 10 兆円規模で推移しています(リフォーム市場の関連記事参照)。ただし住宅リフォームは中小事業者の過当競争で単価が下がりやすく、「市場が大きいから儲かる」とは直結しません。自社の技術領域・営業チャネル・既存顧客基盤と照らし合わせた上で、参入角度を選ぶ必要があります。

2. 解体工事の需要動向(法令遵守が前提)

改正空家法の施行で市区町村の勧告件数が増えれば、解体需要も増える方向にあります。ただし解体工事は以下の法令・許可・安全面の前提を満たす必要があります。

  • 建設業法の「解体工事業」の建設業許可(請負金額が建築一式1,500万円未満・それ以外500万円未満の軽微な工事を除く)
  • 建設リサイクル法に基づく解体工事業登録(施工区域の都道府県知事単位。ただし、建設業法上の土木工事業・建築工事業・解体工事業の許可を受けている者は登録不要)
  • 石綿関連規制:2022年4月から一定規模以上の工事で石綿事前調査結果の行政報告が義務化、さらに2023年10月からは有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による事前調査が義務化(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)
  • 廃棄物処理法に基づく建設廃棄物のマニフェスト管理・分別排出
  • 労働安全衛生法・近隣住民への事前説明・騒音規制法・振動規制法の遵守

「木造住宅の解体は参入しやすい」と一般論で語られることがありますが、2022 年 4 月からの石綿事前調査結果の行政報告義務化、2023 年 10 月からの建築物石綿含有建材調査者などの有資格者による事前調査義務化、建設リサイクル法の運用強化で、許認可と書類管理のコストは増えています。参入判断は、自社の許認可保有状況・協力会社ネットワーク・法令遵守体制の整備状況を踏まえた判断が必要です。

3. 地域別の市場選択

総務省「住宅・土地統計調査」2023年の都道府県別公表値では、空き家率に大きな地域差があります。和歌山・徳島・山梨・高知・鹿児島などは20%前後で5戸に1戸が空き家。沖縄・埼玉・神奈川・東京・愛知は10%前後にとどまります。

自社の営業エリアの空き家率は、新築・リフォーム・解体のリソース配分を考える上での参考指標になります。ただし空き家率が高い地域でも、県庁所在地・観光地・建替え需要のある住宅地では新築・リノベ需要が残る場合があるため、都道府県単位の率だけで判断するのではなく、市区町村単位・町丁目単位の実態を営業で確認する方が現実的です。

空き家再生ビジネスの典型的な注意点

以下は業界メディア・行政書士等の実務で繰り返し話題になる典型パターンの整理で、特定企業・案件の事例ではありません。

改修費用の過小見積り

築 40 年超の木造住宅は、壁を開けると想定外の腐食や白蟻被害が見つかるケースが少なくありません。当初数百万円で見積もった改修が 1,000 万円規模に膨らむことがあり、賃料収入を前提にした投資回収計画が成立しなくなるパターンが典型です。事前の建物調査(住宅診断・インスペクション)を入れた上で見積もる慣行が有効です。

耐震性能の要件確認

1981 年 5 月 31 日以前の建築確認で建てられた住宅は「旧耐震基準」の対象です(1981 年 6 月 1 日以降の建築確認から新耐震基準)。旧耐震基準の建物をリノベーションで事業活用する場合、耐震補強の要件(用途地域・建物規模・用途変更の有無)を確認し、法令上必要な補強を施工する必要があります。耐震改修促進法・建築基準法の適用範囲は個別案件で異なるため、建築士・行政への事前確認が前提です。

立地需要の見極め

リノベーション完了後の入居者・利用者が確保できないリスクは、特に人口減少地域で顕在化しやすい論点です。「つくれば人が来る」という前提ではなく、改修前の地域需要調査(近隣の募集家賃・空室率、交通アクセス、生活利便性)を踏まえた判断が重要です。

参照出典

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免責

本記事は2026年4月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事業計画・投資判断・法規解釈の助言ではありません。改正空家法の運用・住宅用地特例の適用・解体工事の許認可・建築基準法の適用範囲は、個別案件で扱いが異なります。実際の判断は最新の公式資料と自治体・行政書士・建築士・弁護士などの専門家の助言に基づいて行ってください。

出典:各省庁公式データ。最終更新日を必ずご確認ください。
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