
この記事でわかること
住宅金融支援機構のフラット35最頻金利は2021年1月の1.29%から2026年3月には2.25%まで上昇しました(融資率9割以下、借入期間21年以上35年以下、新機構団信付)。同期間に国土交通省「住宅着工統計」の持家新設着工は28.6万戸から20.1万戸(2025年)へ約30%の減少。金利の上昇トレンドと持家着工の減少は同時進行していますが、建築費の高騰や人口減少、世帯数減少、省エネ基準適合義務化など複合要因が絡んでおり、金利だけで着工は語れません。住宅事業者が押さえるべき一次データと、新築依存からの転換論点を整理します。
主要データ
- フラット35最頻金利(融資率9割以下・21年以上35年以下):2021年1月1.29% → 2024年1月1.87% → 2026年3月2.25%(住宅金融支援機構 各月公表値)
- 新設住宅着工:2025年は合計740,667戸・前年比-6.5%で3年連続減(国土交通省「住宅着工統計」2025年計、2026年1月30日公表)。編集部の時系列比較では合計戸数は約61年ぶりの低水準に相当
- 2025年の利用関係別内訳:持家201,285戸(前年比-7.7%)、貸家324,991戸(-5.0%)、分譲208,169戸(-7.6%。マンション89,888戸 -12.2%、一戸建115,935戸 -4.3%)
- 持家着工の5年推移:2021年約28.6万戸 → 2022年約25.3万戸 → 2023年約22.4万戸 → 2024年約21.8万戸 → 2025年20.1万戸。2021年比で約30%減少
- 野村総合研究所「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」(2025年6月12日公表)。2024年度の82万戸から2030年度80万戸、2040年度61万戸への減少見通し
注記:本記事の金利・着工数値は公表時点の参考値です。フラット35金利は月次で変動し、住宅着工も速報値から確報値への修正があり得ます。個別の住宅ローン選択・事業計画は金融機関・専門家との相談が必要です。
フラット35金利は2026年3月に2.25%へ、持家着工は2025年に20.1万戸で3年連続減
日本の住宅ローン市場は長期の超低金利が常態でしたが、2022年以降に潮目が変わりました。住宅金融支援機構のフラット35最頻金利(融資率9割以下、借入期間21年以上35年以下、新機構団信付)は、2017〜2022年にかけて概ね1.1〜1.3%台で推移していたのが、2023年1月に1.68%、2024年1月に1.87%、2026年1月に2.08%、2026年3月には2.25%まで上昇しました。日銀の金融政策正常化に伴う長期金利(10年国債利回り)の上昇が、住宅金融支援機構の機構債利回りを通じてフラット35金利に波及した構造です。
この金利上昇局面で、新設住宅着工は3年連続の減少となっています。国交省「住宅着工統計」2025年計(2026年1月30日公表)では2025年の新設住宅着工が合計740,667戸・前年比-6.5%・3年連続減と発表されており、編集部の時系列比較では合計戸数は約61年ぶりの低水準に相当し、2年連続の80万戸割れは過去20年でも初めての水準です。特に持家の減少が顕著で、2021年の28.6万戸から2025年の20.1万戸まで約30%の減少になりました。
関連ダッシュボードは住宅市場ダッシュボードで月次更新しています。建設コストは建設コストダッシュボードもあわせてご覧ください。
フラット35金利の推移:2021年1.29%から2026年3月2.25%へ
フラット35の最頻金利は住宅金融支援機構の公式サイト「【フラット35】借入金利の推移」で月次に公表されています(融資率9割以下、借入期間21年以上35年以下、新機構団信付の条件)。2021年以降の主な時点を整理します。
時点 | 最頻金利 | 補足 |
|---|---|---|
2021年1月 | 1.29% | 超低金利の継続 |
2022年1月 | 1.30% | ほぼ横ばい |
2023年1月 | 1.68% | 日銀 YCC 修正後に上昇 |
2024年1月 | 1.87% | 1.8%台に定着 |
2025年1月 | 1.94% | 2%目前 |
2026年1月 | 2.08% | 日銀利上げ直後で2%超え |
2026年2月 | 2.26% | 2.2%台に乗せ |
2026年3月 | 2.25% | 前月からやや低下 |
5年で約1ポイントの上昇。住宅ローン金利は借入金額が大きく返済期間も長いため、わずかな金利差でも総返済額に相応の差が出ます。例えば借入4,000万円・35年返済・元利均等の場合、金利1.29%(総返済額約4,965万円)と2.25%(約5,776万円)では総返済額で約810万円の差になる水準です(住宅金融支援機構の返済シミュレーターで自己の条件に合わせて計算できます)。
新設住宅着工の推移:2025年は61年ぶりの低水準740,667戸
国土交通省「住宅着工統計」2025年計(2026年1月30日公表)の主要系列を整理します。
区分 | 2025年戸数 | 前年比 |
|---|---|---|
新設住宅着工 合計 | 740,667戸 | -6.5%(3年連続減) |
持家 | 201,285戸 | -7.7% |
貸家 | 324,991戸 | -5.0% |
分譲住宅 合計 | 208,169戸 | -7.6% |
分譲 マンション | 89,888戸 | -12.2% |
分譲 一戸建 | 115,935戸 | -4.3% |
国交省発表は前年比-6.5%・3年連続減。編集部の時系列比較では、合計戸数740,667戸は過去61年間で最低水準、2年連続の80万戸割れは過去20年でも初めての水準です。特に分譲マンションの-12.2%が目立ちますが、これは建築費高騰とデベロッパーの供給抑制が重なった結果で、月次での振れも大きい領域です。
持家の5年推移:28.6万→20.1万、約30%減少
持家(自分が住むために建てる住宅)の減少幅が最も大きくなっています。
- 2021年:約28.6万戸
- 2022年:約25.3万戸
- 2023年:約22.4万戸
- 2024年:約21.8万戸
- 2025年:20.1万戸
4年で約8.5万戸の減少。持家は個人が自己居住用にローンを組んで建てる住宅のため、フラット35金利の上昇が購入判断に最も直接的に響く区分です。貸家は投資判断、分譲は事業者の供給決定から着工までのタイムラグがあるため、金利変動が即座には反映されにくい構造です。
金利上昇と持家着工減少は同時進行:2021〜2025年の年次5時点で方向性は合致
フラット35最頻金利と持家着工の動きを、2021〜2025年の年次5時点データで単純に重ねてみると、金利が上昇した 2022 年以降に持家着工が減少する方向性は一致しています。ただし、5 時点のデータから相関係数を計算しても統計的な因果は示せないため、「金利上昇局面では持家着工が減少傾向にある」という定性的な読み方にとどめるのが安全です。
チャート `[chart:mortgage-vs-starts]` では、フラット35金利(各年1月値、2026年のみ3月値)と持家着工(暦年合計)を参考比較として重ねています。時点・粒度が異なるため、相関ではなく「同時進行のトレンド比較」として参照してください。単月金利の動きが即座に年間着工に反映されるような因果として読むのは適切ではありません。
金利以外の着工減少要因
持家着工の減少を金利だけで説明するのは過剰です。同時期に作用する他の要因も整理します。
- 建築費の高騰:国交省「建設工事費デフレーター」建設総合は2015年度=100に対し2025年12月で133.2(e-Stat 2026年3月31日更新)。10年で33%の上昇で、金利上昇と重なって住宅取得のハードルを押し上げています
- 人口・世帯数の減少:総務省の人口推計で日本の総人口は継続的に減少、世帯数も2030年代にピークアウトの見通しが示されています。住宅需要の分母そのものが縮小しています
- 省エネ基準適合義務化:2025年4月から新築住宅に省エネ基準適合が義務化されました。義務化前の駆け込み需要と反動減が着工数を一時的に振らせる要素として作用している可能性があります
- 空き家ストックの増加:2023年の住宅・土地統計で空き家900万戸・空き家率13.8%(総務省、過去最多)。既存ストックが過剰な状態での新築供給は構造的に難しくなります
長期見通し:各シンクタンクの住宅着工予測
住宅着工の長期見通しは複数の民間シンクタンクが公表しています。前提条件(金利・人口・政策)は各機関で異なり、確定予測ではなく「一定の仮定を置いた試算」であることに注意が必要です。
- 野村総合研究所(NRI):2040年度の新設住宅着工を61万戸と予測。2024年度の82万戸から2030年度80万戸を経て、2040年度61万戸への減少見通し(NRI「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」2025年6月12日公表)
NRI の予測は住宅価格・世帯数・人口減少などを背景にした長期見通しです。金利が仮に低位に戻ったとしても、着工のトレンド反転は難しいと試算されています。他の民間シンクタンクも住宅市場の長期縮小を前提とした予測を公表していますが、前提条件や推計モデルが機関ごとに異なるため、本稿では検証可能な NRI の最新リリースを中心に扱います。
住宅事業者が押さえる論点
持家比率の高い事業者にとって、新築依存からの転換論点が現実的な検討課題になっています。いくつかの選択肢を整理します(各選択肢の適否は事業規模・営業エリア・技術構成で異なります)。
1. リフォーム・リノベーション市場
国交省「建築物リフォーム・リニューアル調査」令和6年度(2024年度)計では、リフォーム・リニューアル受注高の合計が13兆8,303億円、うち住宅に係る工事は4兆1,318億円となっています(住宅分は前年比3.3%減)。総務省「令和5年住宅・土地統計調査」では総住宅数6,504.7万戸(うち空き家900万戸)と既存ストックの厚みは大きく、新築の施工実績がある既存顧客への住宅リフォーム提案は、新規営業よりも案件単価と案件獲得効率の面で事業ポートフォリオに組み込みやすい選択肢です。
2. 貸家・分譲への事業拡張
持家の減少ペースに比べて、貸家と分譲は相対的に底堅く推移しています(貸家324,991戸、分譲一戸建115,935戸、2025年)。ただし貸家・分譲は元請の資金力・営業チャネル・設計ノウハウが持家と異なるため、中小工務店にとって参入障壁は低くありません。段階的な展開や協業が現実的です。
3. 非住宅分野への展開
物流倉庫、データセンター、半導体工場といった非住宅の大型建築は、堅調な需要が業界メディアで報じられています。ただし、専門技術と許可要件が住宅と異なるため、JV(共同企業体)、下請・協力関係、M&Aを通じた参入が中小にとって現実的です。
4. 省エネ・耐震での差別化
2025年4月の省エネ基準適合義務化後は、義務化レベルを超える高性能住宅(ZEH・Nearly ZEH など)での差別化余地が残ります。金利・建築費が上がる局面では、価格競争ではなく性能・品質・アフターサービスでの訴求が中長期の経営安定に寄与する可能性があります。
参照出典
- 住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」:https://www.flat35.com/kinri/kinri_suii.html
- 国土交通省「住宅着工統計」2025年計(2026年1月30日公表):報道発表 https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001350.html、本文PDF https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha25.pdf、時系列一覧 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000002.html、e-Stat の建築着工統計調査トップ https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass=000001016986(住宅着工統計の月次・年次表へ遷移)
- 総務省「令和5年 住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点):https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html
- 国土交通省「建設工事費デフレーター」(2015年度=100、本稿では2025年12月『建設総合』値、e-Stat 2026年3月31日更新):https://www.e-stat.go.jp/statistics/00600270
- 国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」(住宅・非住宅別の受注高、令和6年度計):https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk2_000033.html(調査トップページから最新四半期・年度計の報道発表PDFへ遷移)
- 野村総合研究所「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」2025年6月12日公表:https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20250612_1.html(詳細 PDF:https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/files/000047735.pdf)
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免責
本記事は2026年4月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の住宅ローン選択・投資判断・事業計画の助言ではありません。フラット35金利は月次で変動し、住宅着工統計は速報値から確報値への修正があり得ます。住宅取得・事業投資の判断は、最新の金融機関情報・公式統計・専門家の助言に基づいて行ってください。


