
この記事でわかること
帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025 年)」(2025 年 11 月 21 日公表)によると、建設業の後継者不在率は 57.3% で、業種別では最も高い水準が続いています。一方、過去最高だった 2018 年の 71.4% からは 14.1 ポイント低下、前年比でも 2.0 ポイント低下と 7 年連続の改善傾向です。全国全業種では 50.1% で過去最低を更新し、「脱ファミリー」承継の進展が背景にあります。本記事では建設業の特殊事情、事業承継の選択肢、中小事業者の対応論点を整理します。
主要データ
- 建設業の後継者不在率:57.3%(2025年)、全業種ワースト水準。2018年71.4% → 2025年57.3% で 7 年連続改善(帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」2025年11月21日公表)
- 全国全業種の後継者不在率:50.1%(2025年)、前年比2.0ポイント低下、過去最低を 7 年連続更新(同調査)
- 業種別比較:最低は製造業42.4%、最高は建設業57.3%(同調査)
- 調査対象:信用調査報告書ファイル「CCR」等の自社データベースを基に、事業承継の実態について分析可能な約27万社(全国・全業種)における後継者の決定状況、対象期間2023年10月〜2025年10月(同調査、通算12回目)
- 建設業特有の事情:営業所技術者等(旧専任技術者、改正建設業法で用語整理)の配置要件、経営業務管理責任者の要件、建設業許可の承継手続きが事業承継のハードル
注記:本記事の数値は帝国データバンクの公表値に基づきます。後継者不在率の定義(CCRデータベースで「後継者あり」と確認できない企業の割合)は同社の集計手法に依存します。最新値は同社公式サイトでご確認ください。
帝国データバンクが2025年11月21日に公表した「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」では、建設業の後継者不在率は57.3%。業種別では最も高い水準が続いていますが、過去最高だった2018年の71.4%から14.1ポイント低下、前年比でも2.0ポイント低下と7年連続の改善傾向です。全国全業種では50.1%で過去最低を更新し、M&A・親族外承継・社内昇格など「脱ファミリー」の事業承継が広がっている構造が背景です。
関連ダッシュボードは事業承継・M&A データで随時更新しています。
業種別比較:建設業が最も高く、製造業が最も低い
2025 年調査の業種別後継者不在率を整理します(帝国データバンク 2025 年調査)。
業種 | 2025年不在率 | 備考 |
|---|---|---|
建設業 | 57.3% | 業種別最高、2018年71.4%→2025年57.3% で 14.1pt 改善 |
小売業 | 50%台 | 業種・業態で振れ幅あり |
サービス業 | 50%台 | 業態の多様性が大きい |
製造業 | 42.4% | 業種別最低、ファミリー承継が比較的進む |
全産業 | 50.1% | 2024年52.1%→2025年50.1% で過去最低 |
建設業が業種別で最も高い理由は複数考えられます。中小・零細事業者の構成比が高いこと、現場で経営者自身が技術者として動くケースが多く後継者育成に時間が取れないこと、建設業許可の営業所技術者等(旧専任技術者)や経営業務管理責任者の要件が事業承継のハードルになることなどが指摘されています。
改善トレンドの背景
建設業の後継者不在率が 7 年連続で改善している背景には、以下の動きがあります。
- 「脱ファミリー」承継の浸透:従来の親族承継一辺倒から、社内昇格(番頭・幹部社員への承継)や親族外承継(信頼できる役員等)が広がる
- M&A の活発化:レコフデータの月次集計や日本 M&A センターの業界別動向で、建設業の M&A は近年増加傾向。事業承継型 M&A が中小事業者の選択肢として定着しつつある
- 事業承継支援の制度整備:事業承継・引継ぎ補助金、事業承継税制、事業引継ぎ支援センター(独立行政法人中小企業基盤整備機構)等の支援制度が拡充
建設業特有の事業承継ハードル
建設業の事業承継には、他業種にない要件・手続きが伴います。
建設業許可の承継
建設業者の事業承継では、建設業許可の取扱いが論点です。承継スキームによって扱いが異なります。
- 株式譲渡:法人格は存続するため、建設業許可は原則維持される(経営業務管理責任者・営業所技術者等の人的要件は確認)
- 事業譲渡:譲受側で建設業許可の新規取得または認可承継手続きが必要
- 合併・分割:認可承継手続きが必要(2020 年の改正建設業法で承継認可制度が導入され、許可の引き継ぎが容易になった)
個別案件の許可手続きは、行政書士・所管行政庁への確認が前提です。
人的要件の継続確保
建設業許可の維持には、建設業法上の経営体制要件と営業所技術者等(改正建設業法で用語整理)の配置要件を満たす必要があります。具体的な要件類型(常勤役員等の経験要件・補佐体制の要件など)は2020年改正後の制度で複数パターンが整理されており、業種・許可区分・営業所構成で適用が異なります。承継後にこれらの要件を継続して満たせるかは、個別案件で行政書士・所管行政庁への確認が前提です。
営業所技術者等の人的要件(必要な国家資格・実務経験等)も業種ごとに細かく定められており、個別の判定は行政書士・所管行政庁に確認する必要があります。承継後に主力技術者が退職すると、許可要件を欠くリスクが残ります。承継前に技術者の継続意思を確認し、必要に応じて新規採用や代替要員の育成計画を準備することが実務上の論点です。
事業承継の選択肢
後継者不在の中小建設会社が取り得る選択肢を整理します(実際の選択は事業規模・財務状況・技術者構成・経営者意向で異なります)。
1. 親族承継
従来からの王道で、子・親族への承継。建設業特有の技術・人脈・許可要件を一体で引き継げる利点がある一方、親族に承継意思がない・能力面の不安があるといった課題が指摘されることも多く、近年は減少傾向にあります。
2. 社内承継・親族外承継
長年の番頭・幹部社員への承継で、技術・取引関係を継続しやすい選択肢です。MBO(マネジメント・バイアウト)スキームで株式を承継する場合、株式の買取資金確保が論点になります。事業承継・引継ぎ補助金や金融機関の事業承継ローンの活用も選択肢です。
3. M&A(第三者承継)
同業他社・異業種への売却で、事業を継続する選択肢です。建設業の M&A は近年増加傾向で、レコフデータ・日本 M&A センター等が業界別動向を公表しています。売却価格は事業規模・利益・純資産・受注残・有資格技術者・建設業許可・経審点・債務状況など複数要素で評価され、年商倍率だけで決まるものではありません。M&A 仲介会社・公認会計士の査定を受けるのが前提です。
4. 廃業・休業
承継先が見つからない場合の選択肢ですが、建設業許可の取消手続き、従業員の処遇、未完工事の引継ぎ、取引先への対応など多くの実務手続きが伴います。倒産より廃業のほうが取引先・従業員への影響を抑えられる側面があり、手続きを早めに着手するほど選択肢の幅を確保しやすくなる傾向があります。東京商工リサーチ「2025 年休廃業・解散」調査では、建設業の休廃業・解散は 10,283 件で全産業最多となっています(P4 倒産記事参照)。
参照出典
- 帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2025年)」2025年11月21日公表:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20251121-successor25y/
- 帝国データバンク「『建設業』の倒産動向(2025年)」2026年1月13日公表:https://www.tdb.co.jp/report/industry/1lm_mer_4e/
- 国土交通省「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(2024年6月14日公布):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk1_000001_00033.html
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構「事業承継・引継ぎ支援センター」:https://shoukei.smrj.go.jp/
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免責
本記事は2026年4月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の経営判断・事業承継判断・税務判断の助言ではありません。建設業許可の承継手続き、承継時の税制適用、株式評価、M&A 価格算定は、個別案件で扱いが異なります。実際の事業承継は、行政書士・公認会計士・税理士・M&A 仲介会社・事業承継・引継ぎ支援センター等への相談を踏まえて進めてください。


