
この記事でわかること
生コンクリートは、出荷量が大きく減っているのに価格は上がっています。東京地区では2025年4月に過去最大級の値上げがありました。背景はセメント・砕石の転嫁と、地域の協同組合が価格を決める独特の構造です。値上げの中身と、コンクリート工事の原価への影響を、現場と経営の目線で整理します。
主要データ
- 東京地区生コンクリート協同組合は2025年4月1日出荷分から価格を1立方メートルあたり3,000円引き上げ。「過去最大」と言われた2022年6月の値上げと同額。2025年度の東京地区の建値(標準的な配合)は1立方メートルあたり25,000円(出典:東京地区生コンクリート協同組合、日本経済新聞)
- 同協組は2026年度は価格を据え置き、2027年4月から3,000円以上の値上げを予定(出典:建通新聞、東京地区生コンクリート協同組合)
- 東京地区の2025年度出荷量は前年度比14.2%減の約217万立方メートル。工場の週休2日導入による稼働日減と、人手不足による現場の工程遅延が要因(出典:東京地区生コンクリート協同組合調べ)
- 値上げの背景は、主材料であるセメント・砕石の価格改定に加え、人件費・輸送費の上昇。生コンは広域流通ができず、地域の協同組合が価格を決める(出典:日本経済新聞、業界各紙)
生コンは、現場に最も近いコンクリートの形です。セメントに砂・砂利・水を混ぜ、ミキサー車で運んで打つ。その生コンが、出荷は歴史的に落ち込んでいるのに、価格は上がっています。
セメントと同じ「需要減でも値上げ」の構図ですが、生コンには地域協同組合という独自の事情も加わります。構造を押さえると、躯体・基礎のコスト先行きが読めます。数字で追います。
本記事の価格情報は参考値です。生コン価格は地域の協同組合の建値と実際の取引価格で異なり、配合(呼び強度・スランプ等)・地域・時期・取引条件によっても変わります。記載の価格・時期は出典時点の公表値であり、最新値は各組合等でご確認ください。
出荷は大幅減、なのに価格は上がった
まず出荷です。東京地区の2025年度の生コン出荷量は、前年度比14.2%減の約217万立方メートルでした(出典:東京地区生コンクリート協同組合調べ)。二桁の減少です。需要そのものの弱さだけでなく、現場が動く日数・時間が減ったことも出荷減に表れているとみられます(要因の切り分けは下記参照)。
一方で価格は上がりました。東京地区では2025年4月1日出荷分から、1立方メートルあたり3,000円の値上げ。これは「過去最大」と言われた2022年6月の改定と同額の上げ幅です。2025年度の東京地区の価格は、協組が示す標準的な配合の建値で1立方メートルあたり25,000円となりました(出典:東京地区生コンクリート協同組合、日本経済新聞)。出荷は二桁減、価格は過去最大級の上げ。セメントと同じ逆転が、生コンでも起きています。
東京地区で過去最大級の値上げ、その後は据え置き
東京地区生コンクリート協同組合は、2025年4月1日出荷分から1立方メートルあたり3,000円を引き上げました。その後、2026年度は価格を据え置き、2027年4月から3,000円以上の値上げを予定すると表明しています(出典:建通新聞、東京地区生コンクリート協同組合)。足元は横ばい、次の上げが控える、という見通しです。
価格は配合によって変わります。呼び強度・スランプ・粗骨材の最大寸法といった条件で単価が違うためです。協組が示すのは基準配合の建値で、実際の取引価格や配合・地域によって増減します。地域別でも、群馬の平野部組合が2026年4月にベース価格を1,000円引き上げるなど、各地で改定が続いています(出典:各地域の生コン協同組合、業界各紙)。
なぜ出荷減でも上がるのか——転嫁と地域協組制
出荷が減っても価格が上がる理由は、二つあります。一つはコスト転嫁です。生コンの主材料はセメントと砕石で、これらが値上げされれば生コンも上げざるを得ません。2025年の値上げも、セメント・砕石の価格改定を受けたものです。これに人件費・輸送費の上昇が重なります(出典:日本経済新聞、業界各紙)。セメント高の波及はセメント価格はなぜ上がるかでも整理しています。
もう一つは、生コン独自の価格決定構造です。生コンはJIS A 5308で練混ぜ開始から原則1.5時間(90分)以内に荷卸しできるよう運搬することが求められ、広域流通ができません。そのため地域ごとの協同組合が価格の目安(建値)を示すことが多く、広域の価格競争が働きにくい面があります。需要が弱いからといって買い手が値引きを引き出しにくい面もありますが、共同販売の実態や組合員外との取引は地域・協組によって異なります。実際の取引価格は取引条件によります。
出荷減の主因は週休2日と人手不足
生コン出荷が落ちた要因は、セメントと共通します。生コン工場の週休2日導入による稼働日の減少と、人手不足による建設現場の工程遅延です(出典:東京地区生コンクリート協同組合調べ)。現場が動く日数・時間が減れば、打設の量も減ります。
協組はこれらを出荷減の要因として挙げています。需要側の弱さに加えて、施工が進まないことも効いている、という整理です。担い手不足と働き方改革が、川下の生コン出荷にまで表れています。働き方改革の進捗とコストへの影響は建設業の働き方改革で整理しています。なお、ここで挙げた出荷量・価格は主に東京地区の例で、全国の出荷動向や他地域の改定状況は地域差があるため、別途ご確認ください。


