
この記事でわかること
鋼材価格は2025年に下落したあと、2026年に反転して上昇しています。東京製鐵が数年ぶりに全製品を値上げし、H形鋼も異形棒鋼も改定が続きます。鉄鋼の企業物価指数と市況の温度差を押さえ、鉄骨・RC工事の見積り更新という現場目線で整理します。
主要データ
- 東京製鐵は2026年3月に全製品を値上げ(厚板5,000円、薄板7,000円/トン)。数年ぶりの全面値上げ。H形鋼は2026年4月出荷分から2,000円、異形棒鋼は3月に15,000円の引き上げ(出典:日本経済新聞、東京製鐵 販売価格表)
- 東京製鐵の異形棒鋼の販売価格(メーカー公表値)は2026年6月でD10が91,000円、D13〜D25が90,000円/トン。H形鋼(200×100)の東京の市中価格は2026年3月時点で1トンあたり約10万円台とされる(出典:東京製鐵 販売価格表、建設物価調査会)。メーカー販売価格と市中実勢は異なる点に注意
- 鉄鋼の国内企業物価指数は2026年3月で141.5(2020年=100、消費税込)と、2020年から4割高い水準。月次の方向感は日銀の最新公表値で要確認(出典:日本銀行 企業物価指数)
- 値上げの理由は労務費・電力料金の上昇など製造コストの増加とされる(出典:日本経済新聞ほか報道)
鋼材は建物の骨格です。鉄骨造ならH形鋼、RC造なら配筋の異形棒鋼。どちらも数量がまとまり、単価の動きが工事原価に直接効きます。その鋼材が、2025年の下落から一転、2026年に上がり始めました。
ただし、品種によって温度差があります。値上げが浸透しているもの、横ばいのもの。市況を分けて見ないと、見積りを読み違えます。数字で追います。
本記事の価格情報は参考値です。実際の取引価格は時期・地域・取引条件・数量により異なります。記載の値上げ額・市中価格は出典時点の公表値であり、最新値は各出典元でご確認ください。
2026年、鋼材が数年ぶりの全面値上げ
電炉大手の東京製鐵は、2026年3月に全製品の値上げを発表しました。厚板で1トンあたり5,000円、薄板で7,000円の引き上げで、全製品の値上げは数年ぶりです(出典:日本経済新聞、東京製鐵 販売価格表)。
建設に直結する品種も動いています。H形鋼は2026年4月出荷分から1トンあたり2,000円、異形棒鋼は3月に15,000円の引き上げです。異形棒鋼の上げ幅が大きいのが目を引きます。東京製鐵のメーカー販売価格(公表値)では、2026年6月の異形棒鋼はD10が91,000円、D13〜D25が90,000円です(鋼種の規格により別途の上乗せがあります。詳細は同社価格表を参照)。これはメーカーの公表販売価格で、商社の掛け率や数量を経た市中実勢とは別物です。参考までに、H形鋼(200×100)の東京の市中価格は2026年3月時点で1トンあたり10万円台とされます(出典:建設物価調査会の市況情報。2026年3月時点)。市況ページは随時更新されるため、最新値は同会で確認してください。
値上げの理由は、製造コストの上昇とされています。労務費や電力料金の上昇が背景にあります(出典:日本経済新聞ほか報道)。電炉は電力を多く使うため、電力料金の影響を受けやすい構造です。
2025年は下落、2026年に反転した
今の上昇は、底からの戻りです。鋼材価格は2025年を通じて下落基調にあり、2026年の年明けにかけて安値圏にありました(出典:建設物価調査会)。需要の伸び悩みが効いていました。
その流れが2026年に入って変わります。安値圏まで下がったところにコスト増が重なり、メーカーが値上げに転じた、という構図です。これは指数の解釈ではなく、東京製鐵の全製品値上げやH形鋼・異形棒鋼の引き上げ、異形棒鋼の市況上昇といった実際の価格改定で確認できる動きです(出典:日本経済新聞、建設物価調査会、東京製鐵)。安値圏で発注計画を立てていた現場ほど、上昇局面への切り替えが遅れると見積りと実勢の差が開きます。
鉄鋼の企業物価指数で確認する
原料・素材側の動きは、日本銀行の企業物価指数で追えます。鉄鋼の国内企業物価指数は、2026年3月で141.5(2020年=100、消費税込)と、2020年から4割高い水準にあります(出典:日本銀行 企業物価指数)。
ただし指数の読み方には注意が要ります。同じ2026年3月でも、前年同月比では低下しています(前年の水準が高かったことの裏返しでもあります)。一方で水準そのものは2020年比で高い。前年比と前月比、水準のどれを見るかで印象が変わるため、特定の切り口だけで局面を断じず、最新の方向感は日銀の公表値で確認してください。実際の局面は、指数の解釈よりもメーカーの値上げと市況の動きで読むほうが確かです。2026年は東京製鐵が数年ぶりに全製品を値上げし、異形棒鋼の市況も上昇しています。2025年の下落からの反転は、この実際の価格改定に表れています。
H形鋼と異形棒鋼で温度差がある
同じ建設用鋼材でも、品種で市況の温度が違います。2026年4月時点の東京地区では、異形棒鋼は上昇、H形鋼は横ばいと報じられています(出典:建設物価調査会)。
H形鋼の事情は少し複雑です。鉄骨需要そのものは低迷しています。一方で中東情勢の緊迫を受け、需要家が先行きの値上がりを警戒して購入を急ぐ動きがある。電炉メーカーは値上げを相次いで表明しています。ところが流通段階では、需要低迷下の競合が激しく、表明された値上げがそのまま高値として浸透しきっていない、という状況です(出典:建設物価調査会)。メーカーの改定率と、実際に現場が買う実勢価格には差が出やすい局面です。
異形棒鋼は上げ幅も大きく、値上げが通りやすい品種です。RC造で配筋量の多い物件は、この上昇を実行予算に織り込む優先度が高くなります。
鉄骨・RC工事の実行予算でどう備えるか
まず品種ごとに分けて見積りを更新することです。鉄骨造はH形鋼を中心とした形鋼、RC造は異形棒鋼。市況の温度が違うため、一律の係数で建材費を上げると読み違えます。異形棒鋼は上昇が通りやすく、H形鋼はメーカー表明と実勢に差が出やすい。品種別に最新の市中価格を当たる必要があります。
次に出荷・改定のタイミングです。メーカーの改定は出荷分が基準になります。工程が後ろにずれている物件は、安値圏で組んだ見積りのまま上昇後に仕入れる事態が起きやすい。発注時期と価格改定の関係を点検する余地があります。
失敗の型としては、メーカーの値上げ表明をそのまま実勢価格と見なして過大に見積もる、あるいは逆に表明を無視して安値のまま据え置く、という両極があります。今のH形鋼のように、表明と実勢に差がある品種では、どちらに振れても精度を落とします。市中価格の実績と、専門紙・建設物価調査会などの市況情報を突き合わせて判断するのが現実的です。
経営目線では、鋼材を単独で見ず、建材全体の局面のなかで捉えることです。2026年は鋼材だけでなく、ナフサ起点の塩ビ・PE系配管材や石膏系の内装材など、建材が品目横断で値上げ局面にあります。原燃料を起点とした建材高の全体像はデータで見る建設コストと中東リスクのダッシュボードで確認できます。原油高の波及はナフサ価格の推移2026でも整理しています。
よくある質問
Q1:鋼材はいつから、どのくらい上がっていますか。
A1:東京製鐵は2026年3月に全製品を値上げし(厚板5,000円・薄板7,000円/トン)、数年ぶりの全面値上げとなりました。H形鋼は4月出荷分から2,000円、異形棒鋼は3月に15,000円の引き上げです(出典:日本経済新聞、東京製鐵)。
Q2:鋼材価格は本当に上がっているのですか。
A2:はい。指数の月次解釈よりも、実際の価格改定で確認できます。東京製鐵は2026年3月に数年ぶりの全製品値上げ、H形鋼は4月出荷分から2,000円、異形棒鋼は3月に15,000円の引き上げを実施。2026年春の東京地区では異形棒鋼の市況が上昇しています(出典:日本経済新聞、建設物価調査会)。
Q3:H形鋼と異形棒鋼で値動きが違うのはなぜですか。
A3:2026年春の東京地区では、異形棒鋼が上昇、H形鋼は横ばいと報じられています。H形鋼は鉄骨需要が低迷するなか、メーカーは値上げを表明しても流通段階で高値が浸透しきらない局面です。品種ごとに市中価格を確認する必要があります。
出典・参考
- 建設用H形鋼の値上がり・鋼材値上げ:日本経済新聞「建設用のH形鋼、2年ぶり値上がり」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1433R0U6A410C2000000/)
- 東京製鐵の販売価格(H形鋼・異形棒鋼):東京製鐵 販売価格表(https://www.tokyosteel.co.jp/salesprice/)
- 鉄鋼の企業物価指数:日本銀行「企業物価指数」(https://www.boj.or.jp/statistics/pi/index.htm)
- 主要資材の市況動向(H形鋼・異形棒鋼):一般財団法人 建設物価調査会(https://www.kensetu-bukka.or.jp/sikyou/tokyo/)
まとめ:品種別に市況を分けて見る
鋼材は2025年の下落から2026年に反転し、東京製鐵が数年ぶりに全製品を値上げしました。理由は労務費・電力料金などの製造コスト増です。鉄鋼の企業物価指数は2020年比で4割高い水準にあり、反転は指数の解釈よりも、実際の値上げと異形棒鋼の市況上昇に表れています。
現場で効くのは、品種別の温度差です。異形棒鋼は上昇が通りやすく、H形鋼はメーカー表明と実勢に差が出やすい。鉄骨造とRC造で、見積りの更新優先度を分ける。市中価格の実績と市況情報を突き合わせ、鋼材を建材高全体の一部として定点観測することが、鉄骨・RC工事の原価管理の精度を上げます。
実際の取引価格とは異なる場合があります。参考値としてご利用ください。


