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建設経営

建設業の資金繰り悪化

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建設業の資金繰り悪化

建設業の資金繰りが悪化している背景

データで見る建設業の倒産ダッシュボードでも確認できるとおり、建設業の倒産件数は増加傾向が続いています。帝国データバンク(TDB)の調査によれば、2025年の建設業倒産件数は2,021件(前年比+6.9%)で、12年ぶりに2,000件を超えました(TDB「建設業の倒産動向調査(2025年)」、2026年1月発表)。

倒産の背景にあるのは「資金繰りの悪化」です。建設業は工事代金の回収まで数か月を要する構造的な特性を持ちます。資材価格の高騰、人件費の上昇、そしてコロナ禍で借り入れたゼロゼロ融資の返済が重なり、手元資金が枯渇する企業が相次いでいます。

東京商工リサーチ(TSR)の調査では、2024年の建設業の休廃業・解散は9,387件に達し、全産業の中で2番目に多い業種でした(TSR「2024年『休廃業・解散企業』動向調査」、2025年2月発表)。倒産には至らなくとも、事業継続を断念する企業がこれだけ存在するという事実は、業界全体の資金繰りの厳しさを示しています。

⚠️ 本記事のデータは公開情報に基づく参考値です。実際の取引価格とは異なる場合があります。参考値としてご利用ください。

コスト倒産の構造:資材高・人件費・転嫁不足

物価高倒産250件の内訳

TDBの調査によると、2024年の建設業における「物価高倒産」は250件に上りました(TDB「物価高倒産の動向調査(2024年)」)。建設資材の価格上昇が直接の引き金です。

国土交通省の建設工事費デフレーターを見ると、2020年を100とした場合、2024年時点で住宅建築は約120前後、非住宅建築も同様の上昇幅を示しています(国土交通省「建設工事費デフレーター」)。鉄鋼、木材、生コンクリートなどの主要資材が軒並み値上がりし、工事原価を押し上げています。

問題は、この原価上昇分を工事価格に転嫁できていない点です。元請けとの契約は着工前に締結されるケースが多く、工期中に資材が値上がりしても追加請求が認められにくい商慣習があります。結果として「売上は立つが利益が出ない」工事が増え、資金繰りを圧迫しています。

人手不足倒産99件の現実

2024年の建設業における「人手不足倒産」は99件でした(TDB「人手不足倒産の動向調査(2024年)」)。受注はあるのに施工体制を組めず、工期遅延や受注辞退を余儀なくされるケースです。

日銀短観(2024年12月調査)では、建設業の雇用人員判断DI(「過剰」−「不足」)は▲57と、全産業平均の▲36を大幅に下回りました(みずほリサーチ&テクノロジーズ「日銀短観の解説レポート(2024年12月)」)。建設業は全産業の中でも突出して人手が足りていません。

人手不足は直接的にコスト増につながります。技能者の確保には賃上げが必要ですが、先述のとおり工事価格への転嫁が追いつかないため、利益率はさらに低下します。この悪循環が資金繰りを蝕んでいます。

ゼロゼロ融資の返済と信用不安

コロナ融資の「出口」問題

コロナ禍で多くの建設会社が利用した実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)の返済が本格化しています。TDBの調査によると、2024年の建設業における「ゼロゼロ融資後倒産」は143件でした(TDB「ゼロゼロ融資後倒産の動向調査(2024年)」)。

ゼロゼロ融資は据置期間が最長5年、返済期間が最長10年に設定されており、2023年から2025年にかけて返済のピークを迎えています。コロナ禍の売上減少から回復しきれないまま返済が始まった企業にとって、毎月の返済負担は資金繰りに直結する問題です。

信用収縮の連鎖

ゼロゼロ融資の返済が滞ると、金融機関からの追加融資が困難になります。建設業は運転資金の回転が遅い業種であるため、銀行融資が止まった時点で資金ショートに陥るリスクが高くなります。

さらに、元請けが倒産した場合の連鎖倒産も無視できません。工事代金が未回収のまま元請けが破綻すれば、下請け・孫請けの資金繰りは一気に悪化します。2025年に2,021件の倒産が発生した建設業界では、この連鎖リスクが常に存在しています。

資金繰り改善の実務対策

支払条件の交渉:手形サイト60日への法改正動向

建設業の資金繰り改善で注目すべき動きが、手形サイト(振出日から支払期日までの期間)の短縮です。従来、建設業界では120日(4か月)の手形が広く流通していましたが、政府は約束手形の利用廃止・サイト短縮を推進しています。

経済産業省は2024年11月、下請代金の支払いに用いる手形のサイトを60日以内とするよう下請法の運用基準を強化しました(経済産業省「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた取組について」、2024年11月)。建設業法においても同様の方向性が示されており、元請けに対して現金払いまたは短期サイトの手形への移行が求められています。

下請けの立場から交渉する際は、この法改正動向を根拠として提示することが有効です。「業界の方向性」ではなく「法的な裏付けのある要請」として伝えることで、交渉力が変わります。

出来高払いの活用

工事代金の支払方式を「完成一括払い」から「出来高払い」に変更することは、資金繰り改善の基本的な手段です。公共工事では中間前払金制度が整備されており、当初契約額の2割に加えて工事の半分が完了した時点でさらに2割の前払いを受けることができます(公共工事の前払金保証事業に関する法律)。

民間工事でも、契約時に出来高払いの条件を盛り込む交渉は可能です。特に工期が6か月を超える案件では、月次または工区ごとの出来高精算を契約書に明記しておくことで、資金繰りの予測精度が向上します。

前払金制度・ファクタリングの活用

公共工事の前払金制度は、受注者が工事着手前に契約額の4割以内の前払いを受けられる制度です。利用率は高いものの、中小建設会社の中には制度自体を知らないケースも見受けられます。

民間の資金調達手段としては、売掛債権を早期に現金化するファクタリングサービスがあります。手数料が発生するため利益率は低下しますが、手形割引よりも迅速に資金化できる場合があります。利用にあたっては、手数料率と資金化までの日数を複数社で比較検討する必要があります。

注意すべき失敗パターン

資金繰りが悪化した局面でよくある失敗は「利益度外視の受注」です。手元資金を確保するために採算割れの工事を受注し、結果的に赤字が拡大して倒産に至るケースがTDBの倒産事例でも繰り返し報告されています。売上よりもキャッシュフロー、受注額よりも粗利率を優先する判断が求められます。

まとめ

建設業の資金繰り悪化は、物価高倒産250件、人手不足倒産99件、ゼロゼロ融資後倒産143件という数字が示すとおり、複合的な要因が絡み合った構造的な問題です。2025年の倒産2,021件(12年ぶり2,000件超)、休廃業・解散9,387件という規模は、業界全体が資金繰りのリスクにさらされていることを意味します。

改善策としては、手形サイト60日への短縮交渉、出来高払い・前払金制度の活用、採算管理の徹底が実務上の対応策となります。法改正の動向を把握しておくことで、交渉の根拠も得られます。

建設業の倒産動向の最新データはデータで見る建設業の倒産ダッシュボードで確認できます。また、2025年の倒産動向を詳細に分析した建設業の倒産が過去10年最多の2,021件も合わせてご覧ください。

出典:各省庁公式データ。最終更新日を必ずご確認ください。
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