
この記事でわかること
「施工管理の年収」を公的統計で押さえると、建築技術者が641.6万円、土木技術者が596.5万円です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年、産業計・企業規模10人以上・男女計)。なお本記事の年収は、統計表の月給を12倍して年間賞与を足した推計値です。月給は令和6年6月分、賞与は前年1年間の実績にあたります。同じ職種でも企業規模1,000人以上と10〜99人では142.7万円の開きがあり、その差の約半分は月給ではなく賞与から生まれています。
主要データ
- 建築技術者の年収は641.6万円(平均43.6歳・勤続12.9年・労働者数41.3万人)。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年、産業計・企業規模10人以上・男女計
- 土木技術者は596.5万円(平均46.0歳・勤続14.8年・労働者数30.9万人)。同調査
- 建築技術者の企業規模別は、1,000人以上726.7万円/100〜999人654.6万円/10〜99人584.0万円。最大142.7万円の差(同調査)
- その142.7万円の内訳は、月給差70.2万円(年換算)に対し賞与差72.5万円。差の50.8%が賞与由来(同調査から算出)
- 技能者側は電気工事従事者547.6万円、建設躯体工事従事者506.0万円、配管従事者485.9万円、大工448.7万円、土木従事者・鉄道線路工事従事者415.1万円。建築技術者との差は電気工事従事者で約94万円、大工で約193万円、土木従事者で約227万円(同調査から算出)
まず前提:「施工管理」という職種は統計に無い
年収を調べるときに最初でつまずくのがここです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には「施工管理」という職種区分がありません。業務内容が近い区分として、本記事では「建築技術者」と「土木技術者」を参照します。ただし統計上、この2職種が施工管理職だけを集計しているわけではありません。設計や積算の担当者も同じ区分に入ります。
もう一つ、この2職種は建設業だけを切り出した数字ではありません。産業計の集計なので、設計事務所や不動産会社、メーカーの技術部門に在籍する人も含まれます。「建設会社の施工管理職の平均年収」とイコールではない点は、社内で数字を使うときに明記します。
逆に言えば、求人サイトが出す「施工管理の平均年収」は自社に登録した会員の申告ベースです。母集団が転職希望者に偏ります。公的統計は母集団が広く、毎年同じ定義で取られるので、経年比較と規模別比較には公的統計のほうが向いています。
なお本記事は職種別・企業規模別の年収を扱います。建設業全体の賃金水準と採用課題は建設業の年収は高いのに人が来ないで別途整理しています。
建築技術者641.6万円、土木技術者596.5万円
令和6年調査の実額です。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しています。
職種 | 平均年齢 | 勤続年数 | 月給(千円) | 年間賞与(千円) | 年収 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
建築技術者 | 43.6歳 | 12.9年 | 434.7 | 1,200.0 | 641.6万円 | 41.3万人 |
土木技術者 | 46.0歳 | 14.8年 | 405.2 | 1,102.9 | 596.5万円 | 30.9万人 |
電気工事従事者 | 43.4歳 | 12.7年 | 367.6 | 1,064.9 | 547.6万円 | 22.2万人 |
建設躯体工事従事者 | 43.0歳 | 9.6年 | 368.2 | 641.7 | 506.0万円 | 10.4万人 |
測量技術者 | 45.0歳 | 14.3年 | 331.3 | 1,040.1 | 501.6万円 | 2.1万人 |
配管従事者 | 45.6歳 | 12.8年 | 345.3 | 714.9 | 485.9万円 | 6.2万人 |
大工 | 40.6歳 | 10.3年 | 330.5 | 520.8 | 448.7万円 | 1.5万人 |
土木従事者・鉄道線路工事従事者 | 46.0歳 | 9.7年 | 305.8 | 481.4 | 415.1万円 | 18.4万人 |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和6年(産業計・企業規模10人以上・男女計)。月給は所定内給与に時間外手当等を含む「きまって支給する現金給与額」です。
建築技術者と土木技術者の差は45.1万円です。平均年齢は土木のほうが2.4歳上なので、年齢が上で年収が下という並びになっています。この差がどこから来ているかは、この表だけでは特定できません。産業構成・発注形態・企業規模・残業時間を分けて見る必要があります。
企業規模で142.7万円の差。半分は賞与でついている
同じ建築技術者でも、勤め先の規模で年収は大きく変わります。
企業規模 | 平均年齢 | 月給(千円) | 年間賞与(千円) | 年収 |
|---|---|---|---|---|
1,000人以上 | 41.8歳 | 473.4 | 1,586.1 | 726.7万円 |
100〜999人 | 42.3歳 | 431.0 | 1,374.4 | 654.6万円 |
10〜99人 | 45.5歳 | 414.9 | 860.9 | 584.0万円 |
出典:同調査(建築技術者・男女計)。
1,000人以上と10〜99人の差は142.7万円です。ここを分解すると、差のつき方が見えてきます。
- 月給の差:473.4千円 − 414.9千円 = 58.5千円/月。年換算で70.2万円
- 年間賞与の差:1,586.1千円 − 860.9千円 = 72.5万円
- 年収差142.7万円のうち、賞与が占める割合は50.8%
月給ベースで見れば、10〜99人規模でも1,000人以上の87.6%まで来ています。開きが大きいのは賞与のほうです。年収を求職者に説明する場面では、月給・賞与・残業時間を分けて示すと、どこで差がついているかが比較しやすくなります。
もう一点、見落とされやすい数字があります。超過実労働時間は1,000人以上が月20時間、10〜99人が月13時間です。大手のほうが残業は7時間多い。月給には時間外手当が含まれるので、月給差58.5千円のうち一部は残業代の差です。「大手は給料が高いうえに楽」ではありません。採用面談では、自社の実残業時間と年収水準を同じ表に置くと、比較の前提がそろいます。
技術者と技能者で94万〜227万円の差
建築技術者641.6万円に対し、技能者側は電気工事従事者547.6万円、建設躯体工事従事者506.0万円、配管従事者485.9万円、大工448.7万円、土木従事者・鉄道線路工事従事者415.1万円です。差は職種によって約94万円から約227万円まで開きます。「技能者は一律に低い」という括り方はできません。電気工事従事者は測量技術者より上に来ています。
職種間の差は、賞与ではなく月給から生まれています。建築技術者と大工の差約193万円を分解すると、月給差の年換算が125.0万円、賞与差が67.9万円で、月給が差の64.8%を占めます。土木従事者・鉄道線路工事従事者との差約227万円でも月給由来が68.3%です。企業規模の差が賞与でついていたのとは逆で、職種の差は月々の支給額そのものに出ています。
ただし賞与の開き方は職種でばらつきます。建築技術者の年間賞与1,200.0千円に対し、大工は520.8千円(建築技術者比43.4%)、土木従事者は481.4千円(同40.1%)ですが、電気工事従事者は1,064.9千円(同88.7%)で建築技術者に近い水準です。雇用形態や賞与制度の違いまでは、この統計表からは確認できません。別のデータで当たる必要があります。
一方で、公共工事設計労務単価は令和8年3月適用で全国全職種加重平均25,834円まで上がり、14年連続の上昇です。公共工事設計労務単価 令和8年度で詳しく整理していますが、単価の上昇が技能者の年収に届いているかは別問題です。単価は積算上の値であり、実際の支払いは各社の給与制度を通ります。技能者の待遇を見直すなら、単価上昇分が賞与や一時金にどう反映されるかを制度上の論点として確認します。
男女差は184.5万円。ただし年齢構成が違う
建築技術者の男女別は、男性666.5万円(平均44.6歳・勤続13.6年)に対し女性482.0万円(平均37.2歳・勤続8.2年)で、差は184.5万円です。
平均年齢が7.4歳、勤続年数が5.4年違うため、この184.5万円をそのまま性別だけによる差とは読めません。一方で、年齢や勤続をそろえても賃金差が残る可能性はあります。この表から言えるのは、少なくとも未調整の平均年収に184.5万円の開きがある、という点までです。
女性の建築技術者は5.6万人で、全体41.3万人の13.5%です。母数としては小さく、採用の裾野を広げる余地があるという読み方もできます。
この数字を経営判断に使うなら
ここまでの数字から、自社の状況を整理する切り口を挙げます。
- 月給と賞与を分けて自社水準を並べる。規模差142.7万円の半分は賞与でした。月給だけを他社と比べても、差の実像はつかめません
- 残業時間を同じ表に置く。大手のほうが月7時間残業が多いという結果でした。自社の実績が短いなら、年収の見劣り分に対する説明材料になります。長いなら、年収でも時間でも見劣りしている状態です
- 年齢構成を揃えて読む。土木技術者は建築より2.4歳上で45.1万円低いという結果です。少なくとも職種をまたいだ比較では、平均年齢が高い職種ほど年収も高いとは限りません
- 技能者は職種ごとに水準が違う。建築技術者との差は約94万円から約227万円まで幅があります。「技能者」で一括りにした処遇設計は実態と合いません
具体的な賃金制度・賞与制度の設計は、就業規則や賃金規程との整合を確認したうえで、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
この数字を使うときの注意点
- 産業計であり建設業限定ではありません。建築技術者には設計事務所・不動産会社・メーカー勤務が含まれます。自社の水準比較に使うときは、職種の全国相場として扱ってください
- 調査時点がずれます。月給は各年6月分、賞与は前年1年間の実績です。令和6年調査の賞与は実質的に2023年の支給実績を含みます
- 年収は推計値です。統計表に「年収」という項目があるわけではありません。6月は賞与月ではないため、月給に賞与は含まれていません
- 企業規模は事業所でなく企業の規模です。現場単位の人数ではありません
失敗しやすいのは、この平均値を自社の給与テーブルの目標にそのまま置いてしまうケースです。平均年齢43.6歳・勤続12.9年という条件つきの数字なので、20代中心の会社が641.6万円を基準にすると原資が持ちません。年齢階級別の数字を取り、自社の年齢構成に合わせて読み替えます。
まとめ
施工管理に近い建築技術者の年収は641.6万円、土木技術者は596.5万円です。企業規模で142.7万円の差があり、その半分は賞与から生まれています。月給の差は思ったほど大きくありません。
採用や処遇の説明で使うなら、月給・賞与・残業時間・年齢構成を分けて並べるところからです。人手不足の構造そのものは建設業の人手不足はなぜ深刻かで整理しています。資格と職域の関係は施工管理技士7種類の違いと選び方、就業者数・賃金の推移はデータで見る建設業の人材で更新しています。
参照出典
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)、2025年3月17日公表:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040247854
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」2026年2月17日公表:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00337.html
本記事の数値は厚生労働省の公表値に基づく一般的な情報提供であり、個別の給与制度設計・労務判断の助言ではありません。統計は定義や集計方法が改定される場合があります。


