
この記事でわかること
「施工管理の年収」を公的統計で押さえると、建築技術者が679.1万円、土木技術者が625.0万円です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年、産業計・企業規模10人以上・男女計)。本記事の年収は、統計表の月給を12倍して年間賞与を足した推計値です。月給は令和7年6月分、賞与は前年(2024年)1年間の実績です。同じ建築技術者でも企業規模1,000人以上と10〜99人では275.0万円の開きがあり、その約7割は賞与ではなく月給から生まれています。
主要データ
- 建築技術者の年収は679.1万円(平均43.4歳・勤続12.9年・労働者数37.3万人)。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年、産業計・企業規模10人以上・男女計
- 土木技術者は625.0万円(平均46.0歳・勤続13.4年・労働者数30.8万人)。同調査
- 建築技術者の企業規模別は、1,000人以上860.5万円/100〜999人659.4万円/10〜99人585.5万円。最大275.0万円の差(同調査)
- その275.0万円の内訳は、月給差192.0万円(年換算)と賞与差83.0万円。差の69.8%が月給由来(同調査から編集部試算)
- 技能者側は電気工事従事者628.1万円、配管従事者523.1万円、大工485.5万円、土木従事者・鉄道線路工事従事者435.2万円、建設躯体工事従事者414.5万円。建築技術者との差は電気工事従事者の51.0万円から建設躯体工事従事者の264.6万円まで(同調査から編集部試算)
まず前提:「施工管理」という職種は統計に無い
年収を調べるときに最初でつまずくのがここです。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には「施工管理」という職種区分がありません。業務内容が近い区分として、本記事では「建築技術者」と「土木技術者」を参照します。ただし統計上、この2職種が施工管理職だけを集計しているわけではありません。設計や積算の担当者も同じ区分に入ります。
もう一つ、この2職種は建設業だけを切り出した数字ではありません。産業計の集計なので、設計事務所や不動産会社、メーカーの技術部門に在籍する人も含まれます。「建設会社の施工管理職の平均年収」とイコールではない点は、社内で数字を使うときに明記します。
逆に言えば、求人サイトが出す「施工管理の平均年収」は自社に登録した会員の申告ベースです。母集団が転職希望者に偏ります。公的統計は母集団が広く、毎年同じ定義で取られるので、経年比較と規模別比較には公的統計のほうが向いています。
なお本記事は職種別・企業規模別の年収を扱います。建設業全体の賃金水準と採用課題は建設業の年収は高いのに人が来ないで別途整理しています。職種別の年収を一覧で比べたい場合はデータで見る建設職種の年収も参照してください。
建築技術者679.1万円、土木技術者625.0万円
令和7年調査の実額です。年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しています。
職種 | 平均年齢 | 勤続年数 | 月給(千円) | 年間賞与(千円) | 年収 | 労働者数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
建築技術者 | 43.4歳 | 12.9年 | 456.2 | 1,316.1 | 679.1万円 | 37.3万人 |
電気工事従事者 | 41.6歳 | 14.3年 | 411.5 | 1,343.1 | 628.1万円 | 22.0万人 |
土木技術者 | 46.0歳 | 13.4年 | 417.9 | 1,234.7 | 625.0万円 | 30.8万人 |
測量技術者 | 46.1歳 | 12.6年 | 362.4 | 1,081.7 | 543.1万円 | 3.0万人 |
配管従事者 | 42.9歳 | 12.7年 | 368.6 | 807.5 | 523.1万円 | 9.3万人 |
大工 | 50.2歳 | 11.0年 | 360.3 | 531.3 | 485.5万円 | 1.9万人 |
土木従事者・鉄道線路工事従事者 | 46.7歳 | 10.4年 | 320.6 | 504.9 | 435.2万円 | 18.5万人 |
建設躯体工事従事者 | 41.9歳 | 9.6年 | 320.2 | 302.7 | 414.5万円 | 9.5万人 |
出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年(産業計・企業規模10人以上・男女計)。月給は所定内給与に時間外手当等を含む「きまって支給する現金給与額」です。年収は編集部試算。
建築技術者と土木技術者の差は54.1万円です。平均年齢は土木のほうが2.6歳上なので、年齢が上で年収が下という並びになっています。この差がどこから来ているかは、この表だけでは特定できません。産業構成・発注形態・企業規模・残業時間を分けて見る必要があります。
もう一つ目を引くのが電気工事従事者です。628.1万円で土木技術者を3.1万円上回り、建築技術者に次ぐ2番目に来ています。前年(令和6年調査)は547.6万円でした。逆に建設躯体工事従事者は506.0万円から414.5万円へ91.5万円下がり、8職種で最も低くなっています。8職種のうち7職種が上がり、下がったのは建設躯体工事従事者だけです。この統計は標本調査なので、1年分の上下は振れも含みます。序列を語るときは単年ではなく、数年分を並べて確かめます。
企業規模で275.0万円の差。7割は月給でついている
同じ建築技術者でも、勤め先の規模で年収は大きく変わります。
企業規模 | 平均年齢 | 月給(千円) | 年間賞与(千円) | 超過実労働時間(月) | 年収 |
|---|---|---|---|---|---|
1,000人以上 | 42.0歳 | 560.4 | 1,879.9 | 23時間 | 860.5万円 |
100〜999人 | 40.4歳 | 447.5 | 1,223.7 | 23時間 | 659.4万円 |
10〜99人 | 46.6歳 | 400.4 | 1,049.8 | 10時間 | 585.5万円 |
出典:同調査(建築技術者・男女計)。年収は編集部試算。
1,000人以上と10〜99人の差は275.0万円です。分解すると、差のつき方が見えてきます。
- 月給の差:560.4千円 − 400.4千円 = 160.0千円/月。年換算で192.0万円
- 年間賞与の差:1,879.9千円 − 1,049.8千円 = 83.0万円
年収差275.0万円のうち、月給が占める割合は69.8%、賞与は30.2%です。10〜99人の月給は1,000人以上の71.4%にとどまります。規模の差は、ボーナスより先に毎月の支給額に出ています。
ただし月給には時間外手当が含まれます。超過実労働時間は1,000人以上が月23時間、10〜99人が月10時間で、大手のほうが残業は13時間多い結果です。月給差160.0千円の一部は残業代の差です。「大手は給料が高いうえに楽」とは言えません。採用面談では、自社の実残業時間と年収水準を同じ表に置くと、比較の前提がそろいます。
なお前年(令和6年調査)は、同じ比較で差が142.7万円、その約半分が賞与から生まれていました。差の大きさも内訳も、1年で大きく動いています。規模差の構造を社内資料に書くときは、調査年も併記すると比較しやすくなります。
技術者と技能者の差は51.0万〜264.6万円
建築技術者679.1万円に対し、技能者側は電気工事従事者628.1万円、配管従事者523.1万円、大工485.5万円、土木従事者・鉄道線路工事従事者435.2万円、建設躯体工事従事者414.5万円です。建築技術者との差は、電気工事従事者の51.0万円から建設躯体工事従事者の264.6万円まで開きます。「技能者は一律に低い」という括り方はできません。
職種間の差は、主に月給から生まれています。建築技術者と大工の差193.6万円を分解すると、月給差の年換算が115.1万円、賞与差が78.5万円で、月給が差の59.5%を占めます。建設躯体工事従事者との差264.6万円でも月給由来が61.7%です。
賞与の開き方は職種でばらつきます。建築技術者の年間賞与1,316.1千円に対し、大工は531.3千円(建築技術者比40.4%)、建設躯体工事従事者は302.7千円(同23.0%)です。一方、電気工事従事者は1,343.1千円(同102.1%)で、建築技術者を上回っています。雇用形態や賞与制度の違いまでは、この統計表からは確認できません。別のデータで当たる必要があります。
一方で、公共工事設計労務単価は令和8年3月適用で全国全職種加重平均25,834円まで上がり、14年連続の上昇です。公共工事設計労務単価 令和8年度で詳しく整理していますが、単価の上昇が技能者の年収に届いているかは別問題です。単価は積算上の値であり、実際の支払いは各社の給与制度を通ります。技能者の待遇を見直すなら、単価上昇分が月給や賞与にどう反映されるかを制度上の論点として確認します。
男女差は178.3万円。ただし年齢構成が違う
建築技術者の男女別は、男性704.4万円(平均44.5歳・勤続13.7年)に対し女性526.1万円(平均36.8歳・勤続8.1年)で、差は178.3万円です。
平均年齢が7.7歳、勤続年数が5.6年違うため、この178.3万円をそのまま性別だけによる差とは読めません。一方で、年齢や勤続をそろえても賃金差が残る可能性はあります。この表から言えるのは、少なくとも未調整の平均年収に178.3万円の開きがある、という点までです。
女性の建築技術者は5.3万人で、全体37.3万人の14.3%です。母数としては小さく、採用の裾野を広げる余地があるという読み方もできます。
この数字を経営判断に使うなら
ここまでの数字から、自社の状況を整理する切り口を挙げます。
- 月給と賞与を分けて自社水準を並べる。令和7年調査では、規模差275.0万円の約7割が月給でした。賞与で埋め合わせる設計だけでは、差の大部分が残ります
- 残業時間を同じ表に置く。大手のほうが月13時間残業が多いという結果でした。自社の実績が短いなら、年収の見劣り分に対する説明材料になります。長いなら、年収でも時間でも見劣りしている状態です
- 年齢構成を揃えて読む。土木技術者は建築より2.6歳上で54.1万円低いという結果です。少なくとも職種をまたいだ比較では、平均年齢が高い職種ほど年収も高いとは限りません
- 技能者は職種ごとに水準が違う。建築技術者との差は51.0万円から264.6万円まで幅があります。「技能者」で一括りにした処遇設計は実態と合いません
具体的な賃金制度・賞与制度の設計は、就業規則や賃金規程との整合を確認したうえで、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。
この数字を使うときの注意点
- 産業計であり建設業限定ではありません。建築技術者には設計事務所・不動産会社・メーカー勤務が含まれます。自社の水準比較に使うときは、職種の全国相場として扱ってください
- 調査時点がずれます。月給は各年6月分、賞与は前年1年間の実績です。令和7年調査の賞与は2024年の支給実績です
- 年収は推計値です。統計表に「年収」という項目があるわけではありません。6月は賞与月ではないため、月給に賞与は含まれていません
- 標本調査なので年ごとに振れます。規模差の内訳は、令和6年調査の「約半分が賞与」から令和7年調査の「約7割が月給」へ変わりました。労働者の少ない職種や規模区分ほど振れが大きくなります
- 企業規模は事業所でなく企業の規模です。現場単位の人数ではありません
失敗しやすいのは、この平均値を自社の給与テーブルの目標にそのまま置いてしまうケースです。平均43.4歳・勤続12.9年という条件つきの数字なので、20代中心の会社が679.1万円を基準にすると原資が持ちません。年齢階級別の数字を取り、自社の年齢構成に合わせて読み替えます。
まとめ
施工管理に近い建築技術者の年収は679.1万円、土木技術者は625.0万円です(令和7年調査)。企業規模1,000人以上と10〜99人では275.0万円の差があり、その約7割は月給から生まれています。一方で大手は残業も月13時間多く、月給差の一部は残業代です。
採用や処遇の説明で使うなら、月給・賞与・残業時間・年齢構成を分けて並べるところからです。人手不足の構造そのものは建設業の人手不足はなぜ深刻かで整理しています。資格と職域の関係は施工管理技士7種類の違いと選び方、就業者数・賃金の推移はデータで見る建設業の人材で更新しています。
参照出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)、2026年3月24日公表:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421116
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」同表(前年比較に使用):https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040247854
- 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」2026年2月17日公表:https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo14_hh_000001_00337.html
本記事の数値は厚生労働省の公表値に基づく一般的な情報提供であり、個別の給与制度設計・労務判断の助言ではありません。統計は定義や集計方法が改定される場合があります。


