
この記事でわかること
2024年の新設住宅着工戸数は79万2,195戸・前年比3.3%減でした。ピーク時1973年の190万戸から半減以下の水準で、持家・貸家・分譲の構成比が変化しています。野村総合研究所の予測では2030年度80万戸、2040年度61万戸まで縮小する見通しです。本記事では国交省「建築着工統計調査」と主要予測をもとに、経営判断に使える数字を整理します。
主要データ
- 2024年の新設住宅着工:79万2,195戸・前年比3.3%減(国土交通省「建築着工統計調査」暦年値)
- 利用関係別(2024年暦年):持家21万8,175戸(-2.8%)、貸家34万2,092戸(-0.5%)、分譲22万5,315戸(-8.5%)
- 長期予測:2030年度80万戸、2040年度61万戸(野村総合研究所、2025年6月12日公表)
- 2040年度の内訳予測:持家14万戸、貸家(給与住宅を含む)29万戸、分譲18万戸(同上)
住宅着工件数が80万戸割れに|2024年実績と持家・貸家・分譲の構造転換
注記:本記事の数値は出典公表時点のものであり、その後の改訂や速報値・確報値の違いがあり得ます。最新値は国土交通省「建築着工統計調査」またはデータで見る住宅市場をご参照ください。
2024年の新設住宅着工戸数は79万2,195戸、前年比3.3%減でした(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告(令和6年計分)」 https://www.mlit.go.jp/report/press/joho04_hh_001279.html / e-Stat https://www.e-stat.go.jp/stat-search?page=1&toukei=00600120 )。1973年の190万戸から半世紀で半分以下になり、80万戸を割り込む水準にあります。「着工が減っているのに現場は忙しく、利益が出ない」のは、建設工事費デフレーター(建設総合)が2026年1月時点で133.3に達するなど建材価格と労務単価が上昇を続けており、戸数が減っても1戸当たりの粗利が薄くなる構造があるためです(詳細は関連記事「建設工事費デフレーター130超でも利益が出ない理由」を参照)。本記事では利用関係別の内訳・長期予測・経営判断への翻訳の3つに分けて整理します。
データで見る住宅市場で都道府県別の着工件数推移を確認できます。
住宅着工件数の長期推移|半世紀で半減した市場
国土交通省「建築着工統計調査」の時系列データから、主要年の水準を確認します(出典:国土交通省「住宅経済関連データ」時系列表)。
- 1973年:190万戸(過去最高)。高度成長期の住宅不足解消期
- 1996年:163万戸(消費増税前の駆け込み含むバブル後の回復ピーク)
- 2009年:78.8万戸(リーマンショック後の底)
- 2020年:81.5万戸(コロナ禍でも底堅い)
- 2023年:81.9万戸
- 2024年:79.2万戸(前年比-3.3%)
50年で100万戸超が減りました。減少の仕方は一様ではなく、1996年から2009年にかけて約84万戸が急落した後、2009年から2023年までは80万戸前後の横ばい圏で推移していました。2024年は再び80万戸を下回り、持家・分譲の減少が主な要因となっています。
80万戸ラインが持つ意味
住宅着工を手がける建設会社は全国で多数存在し、元請・下請を含めた関与者は広範です。80万戸水準は、1990年代の150万戸台、1970年代の180万戸台と比較して市場規模が半分以下に縮んでいることを意味します。「パイ」を奪い合う局面であり、地域・商品・顧客層の選び方で事業の見え方が大きく変わります。
利用関係別の内訳(2024年)
2024年暦年の利用関係別内訳は以下のとおりです(出典:国土交通省「建築着工統計調査」暦年値)。
- 持家:21万8,175戸(27.5%)、前年比-2.8%
- 貸家:34万2,092戸(43.2%)、前年比-0.5%
- 分譲住宅:22万5,315戸(28.4%)、前年比-8.5%
- 給与住宅:6,613戸、前年比+30.2%
持家の縮小と金利環境
持家は2000年代前半に40万戸規模だった時期もありましたが、2024年は21万8,175戸まで減少しています。背景には住宅ローン金利の動向と建築費の高止まりがあります。
住宅ローン金利は、日銀のマイナス金利解除(2024年3月)以降、固定・変動とも金融機関や時期によって見直しが進んでいます。具体的な金利水準・商品別条件は金融機関や提示時期によって差があるため、経営判断に使う際は住宅金融支援機構の公表データや取引行の提示金利を直接確認してください。
借入額が同じでも金利が上がれば月々の返済額は増え、所得の一定割合以上を返済に回せない世帯は審査の壁にぶつかります。購入可能価格帯の上限が下がる局面は、建築会社にとってターゲット層の再定義が必要になる局面でもあります。
貸家の相対的な底堅さ
貸家は34万戸台で推移しており、2024年の前年比も-0.5%と減少幅が小さいのが特徴です。背景には以下の構造要因があります。
- 相続税対策を目的とした土地活用需要(2015年の基礎控除引き下げ以降に継続)
- 単身世帯・高齢者世帯の増加による小規模住戸への需要
- 法人の社宅・外国人労働者向け住居需要
一方で、総務省「住宅・土地統計調査」の2023年調査では、全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%となっており、ストック面では供給過剰の兆候が続いています。貸家の底堅さが中長期的に維持されるかは、地域ごとの賃貸需給・築古物件のリプレース動向を見ないと判断が難しい状況です。
分譲の二極化
分譲住宅は-8.5%と、2024年で最も大きく減少した区分です。分譲マンションと建売住宅で動きが異なるため、以下のように分けて見るのが妥当です。
- 分譲マンション:首都圏では価格上昇が続いており、不動産経済研究所の公表でも東京23区の平均価格は1億円を超える月が出ています。首都圏全体の平均価格も年・月によって大きく振れるため、直近値は公表元で確認してください。価格上昇で戸数は絞られる一方、販売金額ベースでは戸数ほど単純には縮小しない場合があります。販売総額の推移は公表元で個別に確認が必要です(出典:不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」 https://www.fudousankeizai.co.jp/mansion )
- 建売住宅:材料費・労務単価の上昇で販売価格が上がり、購入者の減少と在庫滞留の動きが出ています。パワービルダーの値引き・販促強化も地域によって観察されます
都道府県別の格差|全国平均だけでは読めない市場
全国の前年比-3.3%という数字は全国集計の結果で、都道府県ごとの動きはこれと大きく異なります。東京圏のマンション需要が堅調な月もあれば、地方県で持家が急減する月もあります。自社の営業エリアについては、各都道府県の月次着工データを継続的にウォッチすることが実務上の出発点になります。
背景には、人口動態・所得水準・産業立地・大型開発案件の有無といった要因があり、全国平均では見えない動きが地域ごとに起きています。個別県の具体値は国土交通省の月次公表値やデータで見る住宅市場を参照してください。
九州における半導体関連投資の影響
TSMCの熊本工場(第1工場は2024年稼働、第2工場は当初2027年末稼働予定とされたが計画変更・遅延報道もあり最新状況は要確認)やラピダスの北海道工場(2025年4月パイロットライン稼働、2027年量産開始予定)は、周辺地域の建設・住宅需要を押し上げる可能性がある要因です。熊本県周辺では従業員向け住宅需要、地価上昇、建設作業員の逼迫が報道されています。ただしこの効果は地理的に限定的であり、周辺県では建設作業員の流出という逆方向の影響も指摘されています。具体的な数値は、経営判断に使う前に該当県の月次着工データ・賃金データ・地価公示を個別に確認するのが安全です。
長期予測|60万戸時代への備え
野村総合研究所は2025年6月12日に「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」と題するニュースリリースを公表しました(出典:野村総合研究所ニュースリリース「2040年度の新設住宅着工戸数は61万戸に減少」2025年6月12日 https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20250612_1.html )。主な予測値は以下のとおりです。
- 2030年度:80万戸
- 2040年度:61万戸(2024年度比で約25%減)
- 2040年度の利用関係別内訳:持家14万戸、貸家(給与住宅を含む)29万戸、分譲18万戸
2030年度の80万戸は2024年度の住宅着工水準(暦年実績で約79万戸、年度ベースでも近い水準)に近く、大きな下押しは2030年以降に集中する予測です。予測は前提(人口・金利・住宅政策)の置き方で変動するため、他シンクタンクの予測と突き合わせて幅で読むのが実務的です。
構造要因:人口・ストック・金利
- 人口減少と世帯数のピークアウト:出生数は長期的な減少傾向が続いており、世帯数は2030年代にピークを迎える見通しです(出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」「日本の世帯数の将来推計」)。最新の出生数は厚生労働省「人口動態統計」で年次確認してください
- 住宅ストックの飽和:総住宅数6,502万戸に対して、空き家数は約900万戸・空き家率は13.8%(2023年、総務省「住宅・土地統計調査」)。既存ストックが新設需要の天井を押し下げる構造が継続しています
- 金利の正常化:歴史的な低金利期から正常化への過渡期にあり、借入条件の変化が購買力に影響します
非住宅・リフォーム市場への視点
住宅着工が縮むなかで、非住宅建築とリフォーム市場は住宅新築の減少をそのまま吸収しうる規模かが論点になります。
非住宅建築の濃淡
非住宅全体が一様に成長しているわけではありません。国土交通省「建築着工統計調査」の用途別内訳では、民間非居住建築物は年によって事務所・工場・倉庫が減少する一方、店舗や特定用途が増える構図がみられます。成長と減少が併存しているのが実態で、用途別・地域別に濃淡があります。以下は近年注目されている領域です。
- データセンター:クラウド需要を背景に大都市圏を中心に大規模案件が進行
- 物流施設:EC市場拡大と冷凍冷蔵倉庫需要の継続
- 半導体・先端製造工場:TSMC熊本、ラピダス北海道などの大型案件と周辺インフラ整備
- 再生可能エネルギー関連:発電施設、蓄電池施設の建設
いずれも地域・案件規模で当たり外れが大きく、自社の施工体制・立地・技能者構成とのマッチングで参入可否が決まります。用途別の動きを国交省公表値で定期的に確認することが前提になります。
リフォーム市場
リフォーム市場は矢野経済研究所などが継続的に規模を推計しています。最新値は各調査会社の公表を直接ご確認ください。
省エネ改修関連の補助制度として、2025年度には環境省・経済産業省・国土交通省が連携する「住宅省エネ2025キャンペーン」が実施されました。同キャンペーンは複数の補助事業で構成されており、2026年4月時点の状況は以下のとおりです(出典:住宅省エネキャンペーン公式サイト https://jutaku-shoene2025.mlit.go.jp/ )。
- 2026年3月31日に事業終了:先進的窓リノベ2025事業(窓断熱改修の上限200万円など)、給湯省エネ2025事業、賃貸集合給湯省エネ2025事業(交付申請受付自体はそれ以前に終了済み、2026年4月時点で公式サイト上は各事業とも交付申請受付終了と表示)
- 子育てグリーン住宅支援事業:交付申請受付は終了済みで、完了報告等の事後手続きが継続中(2026年4月時点)
補助金の具体的な金額・対象工事・申請要件・交付決定の前提は事業ごとに異なり、制度改定も頻繁にあります。採用前に各事業の公式サイトおよび国土交通省・経済産業省・環境省の最新発信で直接確認してください。
So What|経営判断への翻訳
80万戸前後の市場規模と、2040年度61万戸という長期予測を前提に、建設会社が備えるべき論点は以下のとおりです。
- エリア戦略の精緻化:全国平均ではなく、自社の営業エリアの月次着工・地価・人口動態を一次データとして扱う
- 商品ミックスの見直し:持家・貸家・分譲・リフォーム・非住宅のどこに重心を置くか。注文住宅一本足の構成はリスクが高まる
- 金利感応度の把握:主要顧客層の年収帯・返済負担率を把握し、金利上昇時に何割が購買力を失うかを自社で試算しておく
- 施工体制の柔軟性:新築住宅とリフォーム・非住宅では技能者構成・工法・工期管理が異なる。切替可能な施工班の設計が必要
- 外部環境のウォッチ:金融政策、住宅政策、半導体・データセンターなどの産業立地動向が、地域の建設需要を左右する
よくある質問
Q1:2024年の住宅着工は結局どのくらい減ったのですか?
国土交通省「建築着工統計調査」の暦年値で79万2,195戸、前年比3.3%減です。2023年の81万9,623戸から約2.7万戸の減少で、ピーク時1973年の190万戸と比べると6割近い減少になります。
Q2:2040年に61万戸まで減るのは確定した見通しですか?
野村総合研究所が2025年6月に公表した予測であり、前提(人口、金利、住宅政策)を置いたうえでの試算です。同種の長期予測は他シンクタンク・業界団体からも公表されており、前提の置き方で結果は変動します。経営判断に使う際は、複数予測の幅で読むのが妥当です。
Q3:都道府県別のデータはどこで確認できますか?
国土交通省「建築着工統計調査」の月次公表値や、e-Stat(政府統計の総合窓口)、データで見る住宅市場で都道府県別・用途別の時系列を確認できます。自社の営業エリアの動きは全国平均と乖離するため、月次で追う運用が実務的です。
出典:各省庁公式データ。最終更新日は各出典の公表日をご確認ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、具体的な経営判断・補助金申請・契約判断は、各分野の専門家および公式発信元に直接ご相談ください。
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まとめ
2024年の新設住宅着工は79万2,195戸・前年比3.3%減(国土交通省)。持家・貸家・分譲のいずれも減少し、特に分譲は-8.5%と縮小幅が大きい状況です。野村総合研究所の予測では2030年度80万戸、2040年度61万戸となる見通しで、今後15年で市場がさらに縮む前提で経営判断を組み立てる必要があります。
全国平均ではなく自社エリアの月次データを追い、持家・貸家・分譲・リフォーム・非住宅の配分を設計する。金利感応度と施工体制の柔軟性を確保する。このあたりが、本統計から引き出せる実務的な論点です。
最新の住宅市場動向はデータで見る住宅市場で随時更新しています。



