
この記事でわかること
厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」(2026年5月27日公表)によると、2025年の建設業の労災死亡者は214人で、前年の232人から18人減りました。全産業の死亡者700人のうち30.6%を建設業が占め、業種別で最多のままです。全体が減った年に、建設業の墜落・転落による死亡だけは77人から91人へ増え、建設業の死亡の42.5%を占めました。
主要データ
- 建設業の死亡者:2025年214人(前年232人から-18人・-7.8%)。1989年以降で最少(2025年値は厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」別表1、2026年5月27日公表。長期系列は建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」。新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除く)
- 全産業の死亡者:700人(前年746人から-46人・-6.2%)。厚生労働省は過去最少と公表。建設業の割合は30.6%
- 建設業の事故の型別:墜落・転落91人(前年77人から+14人、構成比42.5%)。はさまれ・巻き込まれ23人、崩壊・倒壊22人が続く(同 別表3)
- 建設業の死傷者(死亡+休業4日以上):13,437人(前年13,849人から-412人・-3.0%)。全産業135,333人の9.9%(同 別表2)
- 死傷者に占める死亡の割合:建設業1.59%、全産業0.52%で約3倍(別表1・2からの編集部試算)
厚生労働省が2026年5月27日に公表した「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」によると、2025年の建設業の労災死亡者は214人でした。2024年は前年の223人から232人へ増えていましたが、2025年は18人減り、建設業労働災害防止協会の長期系列で見ると1989年以降で最も少ない人数です。全産業の死亡者は700人で、厚生労働省は過去最少と公表しています。建設業はそのうち30.6%を占め、業種別で最多が続いています。数値はいずれも新型コロナウイルス感染症へのり患によるものを除いた確定値です。
長期の推移や災害種類別の内訳は建設業の安全データで更新しています。以下のチャートは建設業労働災害防止協会(建災防)の災害種類別の集計で、厚生労働省の「事故の型」とは区分が一部違います(墜落・転落は同じ値です)。
建設業の死亡は18人減、墜落・転落だけが14人増えました
厚生労働省の別表3(業種、事故の型別死亡災害発生状況)で、建設業の行を2024年と並べると次のとおりです(人数の多い型を抜粋。合計は全ての型の計)。
事故の型 | 2024年 | 2025年 | 増減 |
|---|---|---|---|
墜落・転落 | 77人 | 91人 | +14人 |
はさまれ・巻き込まれ | 25人 | 23人 | -2人 |
崩壊・倒壊 | 30人 | 22人 | -8人 |
激突され | 21人 | 14人 | -7人 |
交通事故(道路) | 18人 | 14人 | -4人 |
飛来・落下 | 11人 | 8人 | -3人 |
高温・低温物との接触 | 11人 | 7人 | -4人 |
感電 | 10人 | 6人 | -4人 |
合計(全ての型) | 232人 | 214人 | -18人 |
人数の多い型で増えたのは墜落・転落だけでした。崩壊・倒壊は30人から22人へ、激突されは21人から14人へ、感電は10人から6人へ減っています。件数の少ない型では、有害物等との接触(2人→7人)、破裂(0人→2人)、火災(0人→2人)が増えています。墜落・転落は2023年86人、2024年77人と2年続けて減っていたので、2025年の91人は3年ぶりの増加です(2023年は令和6年確定値の別表3)。
ただし単年の動きは大きく、2024年は感電が前年の4人から10人へ、崩壊・倒壊が18人から30人へ増えていました。1年で倍増も半減も起きる人数なので、単年の増減から原因を言い当てることはできません。8年続けて変わらないのは、墜落・転落が建設業の死亡原因の最多という点です(建災防の集計で2018〜2025年、構成比33〜44%)。
全産業の事故の型別:墜落・転落186人の約半分が建設業です
全産業でも、2025年の死亡災害で最も多い事故の型は墜落・転落でした。
事故の型 | 2025年死亡者(全産業) | 前年比 | うち建設業 |
|---|---|---|---|
墜落・転落 | 186人 | -2人 | 91人 |
交通事故(道路) | 126人 | +3人 | 14人 |
はさまれ・巻き込まれ | 117人 | +7人 | 23人 |
全産業の墜落・転落186人のうち91人、約49%(編集部試算)が建設業です。交通事故(道路)は陸上貨物運送事業が43人と最も多く、建設業は14人でした。休業4日以上の死傷災害まで広げると最多は転倒で、墜落・転落が最多なのは死亡災害に限った話です。
死傷者は13,437人で2011年以降最少、それでも死亡に至る割合は全産業の約3倍です
建設業の死傷者(死亡+休業4日以上)は2025年に13,437人で、前年の13,849人から412人減り、労働者死傷病報告ベースで比べられる2011年以降で最も少ない人数です(別表2、2013年以前は建設業労働災害防止協会の表)。全産業の135,333人に占める割合は9.9%です。一方、死亡者に占める割合は30.6%なので、建設業は死傷では全体の約1割、死亡では約3割を占めます。
死傷者に占める死亡の割合で比べると、建設業は1.59%、全産業は0.52%で、約3倍の開きがあります(編集部試算)。建設業では、死傷災害のうち死亡に至る割合が相対的に高いということです。この差には事故の型の構成や就業者の構成なども混ざるため、高所作業だけが理由とは言えませんが、死亡の4割超を墜落・転落が占めることとは整合しています。
2024年問題と労災対策の関係
2024年4月から建設業も時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内)の対象になりました。労働時間の制約は疲労の蓄積を抑える方向に働きます。一方で、上限の中で工期を守るには人の追加か生産性の向上が要り、現場の作業密度や新人の比率が変わります。上限規制の初年度だった2024年は建設業の死亡が増え、2年目の2025年は減りましたが、2年分の動きで規制の効果を判定することはできません。
足場と高所作業の規制
墜落・転落が死亡原因の最多であることを受けて、足場と高所作業の規制は段階的に強められてきました。手すり・中さん・幅木の設置、墜落制止用器具(フルハーネス型・胴ベルト型)の使用などが従来からの枠組みです。どの規制が適用されるかは足場の規模・用途・作業条件で変わるため、個別の現場では労働安全衛生規則・厚生労働省の通達を確認し、労働基準監督署・建災防に照会する前提で運用します。
解体・改修工事では石綿の規制も重なります。2022年4月から一定規模以上の解体・改修工事で事前調査結果の報告が、2023年10月から有資格者による事前調査が義務になりました。手続きの詳細はアスベスト事前調査の記事で整理しています。
中小建設会社の安全管理論点
1. 墜落・転落から点検する
2025年は全体が減る中で、人数の多い型では墜落・転落だけが増えました。安全衛生計画のリスクアセスメントを見直すなら、足場・開口部・屋根上・はしご・脚立の作業から手を付けるのが、データに沿った順番です。労働安全衛生法ではリスクアセスメントの実施が努力義務とされており、中小事業者でも年間計画に組み込めます。
2. 元請・下請の連携
建設現場の労災は、元請・下請の責任分担が論点になります。関係請負人を含めた労働者数などが一定の要件を満たす現場では、特定元方事業者に統括安全衛生責任者の選任義務が課されます(要件は労働安全衛生法第15条・同法施行令第7条等で確認)。下請の側にも安全衛生責任者の選任が求められる枠組みがあります。協力会社の作業員の教育履歴は、高所作業に入る作業員から確認していくのが実務的です。
3. 労災保険・上乗せ保険
重大災害では、労災保険の給付を超える賠償を求められることがあります。上乗せ労災保険・使用者賠償責任保険を検討する際は、死亡に至る割合が全産業の約3倍という上の数字を、保険料と補償内容の釣り合いを見る材料にできます。
4. 熱中症
熱中症による死亡は、2021〜2025年の5年累計で建設業が52人と全産業131人の39.7%を占めます(厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」からの編集部試算)。2025年6月1日から、熱中症を生ずるおそれのある作業を行う事業者には、報告体制の整備・周知と、症状の悪化を防ぐ措置の内容・手順の作成・周知が義務づけられています(労働安全衛生規則第612条の2)。元請・下請それぞれの対応は建設現場の熱中症対策の記事で整理しています。
経営判断への翻訳
2025年の数字から読めることは3つです。1つ目は、死亡者の減少は崩壊・倒壊や激突され、交通事故など複数の型が減ったことによるもので、最大の型である墜落・転落はむしろ増えたことです。安全投資を減らす根拠にはなりません。2つ目は、建設業の事故は死亡につながる割合が全産業の約3倍と重いことです。件数が少ない会社でも、1件の重大災害が経営に与える影響は大きくなります。3つ目は、単年の人数は大きく振れることです。前年比で一喜一憂せず、墜落・転落という変わらない最多の型に投資を集めるのが、限られた予算での配分になります。
参照出典
- 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」2026年5月27日:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73382.html
- 厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」別表1〜9:https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001704887.pdf
- 厚生労働省「令和6年の労働災害発生状況」(2024年・2023年の事故の型別):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58198.html
- 建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」:https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/statistics/occupational_accidents.html
- 建設業労働災害防止協会「建設業における死亡災害の工事の種類・災害の種類別発生状況(令和7年)」:https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/statistics/construction/r07.html
- 厚生労働省「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(2025年確定値):https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73330.html
- 厚生労働省「建設業従事者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」:https://kensetsu-roudou-jikan.mhlw.go.jp/client_legislation.html
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免責
本記事は2026年10月時点の公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の安全管理判断・労災対応の助言ではありません。労働安全衛生法・石綿規制・足場規制の適用は、個別の現場・工事・事業規模で異なります。実際の安全管理は最新の公式資料と社会保険労務士・労働基準監督署・建設業労働災害防止協会等の助言に基づいて行ってください。


